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また夢を見た。
もう何度となく見ている夢……
でも、昨日見た夢は
なんだかとても懐かしくて
くすぐったいような夢だった……
父王に連れられどこかの国を訪れた幼き日の私。
退屈そうにしていた私を
男の子が2人、広い庭に案内してくれた。
1人はとても活発で
よく笑いよく遊ぶという言葉がピッタリくる。
その子が私を庭に連れ出してくれた。
『カズちゃん、ほらはやくはやく！
こっち来てみ！！』
お日様のような笑顔でブンブンと手を振って
私を庭のどこかへと手招きする。
そしてもう1人は、大人びた仕草と
優しい微笑みが印象的な子。
私に花を摘んで、花冠を作ってくれた。
『はい、これ、カズにあげる。』
『うわぁ、きれぇ〜！ありがとうサトシ！』
夢の中で、幼い私はその人をサトシと呼んでいた。
昨日、庭でふと思い出したあれは…
サトシ…？
王子、だった？
陛下は私がこの国に来たことがあると仰っていたけれど
私には何故かその時の記憶がない…
じゃあ、その時サトシ王子にも会っていたの…
陛下に会っていたのなら
王子にも会っていたと考えるのが普通だろう。
でも昨日、『はじめまして』といった私に
王子も『はじめまして』と返したはず…
それに夕べも…まるでそんな感じはなかった…
どういうこと？
王子も私と会ったことを忘れていた？
それとも、私に合わせてくれたの？
…忘れていたのだとしても
自分のことを棚に上げて
王子を責めることもできないけど…
でも昨日のあの王子は
それとは違う、もっと別な感情を乗せて
私を見ていた気がする。
それが何かは、よくわからないけれど…
そういえば私、誰かと間違われた。
王子は夢見て寝ぼけたって言ってたけど
あれは………
"トントン"
｢姫様、お目覚めでしょうか？｣
侍女の訪れで、私の物想いは断ち切られた。
しっかりしなくては。
今日はいよいよ挙式の日。
昔がどうであれ
これから私は正式にあの王子の妃となり
共にこの国で歩んで行くのだ。
そしてそれは、地下資源の豊富さ故に
常に強国の脅威に晒されてきた我が祖国に
強大な軍事力という後ろ盾がつくことを意味する。
これはそのための結婚なのだから…
お父様、あなたの期待は裏切りません。
サトシ王子は必ずやカズが
籠絡してみせます。
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