僕は僕の青春を取り戻す【∞】2 (ページ7)

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＃ページ7

◎むらかみさん

2012年5月。

ある日のレコメンの生放送中でのことだった。

「最近、久しぶりにあの子に会ったんですよ。」

「あの子って？」

「あの子。白岡くんですよ。」

目の前にいるヨコが突然、晴人の名前を出したのだ。

晴人が活動休止を発表してからもうすぐ一年半。

ファンの人たちの間では、晴人の話題はなんとなくタブーになりつつあった。

それもそのはず。

2011年の1月に活動休止を発表して以降、事務所からの晴人の進退についての発表は一切なく、彼がこの先グループに戻ってくるかは不透明なまま。

それに加えて、週刊誌が晴人の病態について有る事無い事をはやし立てる。

俺らは、彼に関することを聞かれても閉口するほかなかったのだ。

レコメンにも、晴人を心配する声は絶えず届いている。だが、事務所からのお達しによりそのメッセージを公にすることは今までなかった。

3月に映画撮影に参加したものの、晴人の出演はまだ公式には発表されていない。

復帰時期も未定で、俺らは事務所の対応について疑念を抱いているところやった。

“その話ええんか？”

俺は咄嗟に台本にそう書いてヨコに見せる。
ちらっとヨコの顔を見ると、彼は真っ直ぐな視線を俺に向けていた。

“大丈夫”

彼の口がそう動いたのを確認して、俺もある程度腹をくくる。

たぶんこいつ、今晩で何かを動かす気や。

「俺は会ってへんけどヨコは会ったんやんな。なんか喋った？」

「おん。彼、元気そうでしたよ。いつもみたいにニコニコへらへらしてたわ。」

「そーか。…俺長らく会ってへんなあ。連絡はちょこちょこ取ったりしてたんやけど。」

俺がそう言うと、ヨコはにやりと笑った。

たぶんもう、彼を止められる人は誰もいない。

「今日、久しぶりに電話してみようと思うねん。」

ああ、またマネージャーに怒られるかもな。

でも今日くらい、一緒に怒られたってもええか。