＃ ページ8
◎むらかみさん
2012年5月。
あのレコメンの放送から一週間が経った。
電話に出た晴人は元気そうで、積もりに積もった色んな話を聞くことができた。
今はギターを弾くのにはまっていること。
週一で大倉から電話がかかってくること。
つい最近、関西ジュニアの桐山とテレビ電話をしたこと。
そして、今年こそはまた皆んなの前に立ちたいということ。
久しぶりに彼が公の場に姿を現したことはエイターを大いに喜ばせ、大きな反響を呼んだ。
＿＿＿＿＿だが、それが引き金になったのだろうか。
俺とヨコは事務所に呼び出されることとなった。
目の前には某有名な週刊誌の記事。
頭上からは、事務所の偉い人の重苦しい声が飛んできた。
「白岡の病態が週刊誌にすっぱ抜かれた。これ…どういうことか分かってるよな？確実に、先週のラジオが引き金になっている。」
“関ジャニ∞白岡、精神異常で薬漬け生活？”
“白岡晴人の隠された心の闇”
目の前に置かれた記事には、同じ人間が書いたとは思えないような酷い見出しの数々。
晴人が病院に出入りする写真や、嘘かほんまか分からんような病院関係者の声も掲載されている。
久しぶりに晴人が公の場に姿を現した。
それを良いことに、再び表舞台に出てこようともがいている足を引っ張ってやろうという魂胆や。
「週刊誌にはずっと前から握られてたんだよ。白岡が精神疾患になってることも、薬の中毒で倒れたってことも。」
事務所のお偉いさんの声は怒りに震えている。
俺もヨコも萎縮してしまって、反論の声すら上げることができない。
「今まではどうにかして事務所の力で揉み消してきた。でも今回ばかりは、もうどうしようもない。」
今までも、晴人が重病にかかっているんじゃないかとか、交通事故に遭ったんじゃないかとか、根も葉もない記事が出ていたこともあった。
だけど、真実が暴かれたことは一度も無かった。
それはきっと、事務所の力で本当の情報が漏れるのを止めていたからだ。
「君たちはアイドルなんだから。イメージってもん守らないといけないでしょう。アイドルが精神おかしくなって薬漬けって、どう説明つけるんだよ。」
“守らないといけない”
その言葉を聞いて俺はハッとした。
俺らが本当に守らないといけないもの。
本当に、守るべきもの。
「ちょっといいですか？」
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作者名：さざ波 | 作成日時：2021年2月14日 22時
