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「藤宮殿はいるだろうか!」

「炎柱様、何か御用で…」


相変わらずハキハキとした大きな声が聞こえ、台所から顔を出せば肌色が視界に入り込み思わず目を瞑る。

腰に布を巻いてはいたが、風呂上がりそのままなのだろう。髪が濡れていた。


「包帯を変えるのを手伝ってはもらえないだろうか!」

「…かしこまりました」


気付かれぬよう息を吐き、それから目を開ける。そのまま大きな背中について行った。幾つもの傷跡が目の前で揺れる。

自らの命を削って、人の命を救う仕事。父もそうだった。父は、隣の村の流行病を治すためにたった一人でその地へ向かい、そのまま自らも感染し私たちの元へは帰ってこなかった。

…遺体すら、戻ってこなかったのだ。病が移る、呪われると村人と共に炎に巻かれた。


「よろしく頼む!」

「はい」


濡れた包帯を解けば、内側の方は血が滲んでいた。縫い合わせた跡があり赤紫色に晴れている。

思わず息を呑むが、薬箱を持ってきて薬草をすり潰し塗りつけた。その間炎柱様は一切呻き声を出すことなく、痛いと顔を歪めることもなかった。

ただ静かに、呼吸をしていた。深く息を吸い、深く吐く。その呼吸の音が心地よく耳に届く。


「…傷は痛みませんか?」

「あぁ、大丈夫だ!感謝する!」


包帯を巻き終わりそう尋ねると、そう笑ってくれた。逞しい身体に刻み込まれた痛々しい傷が思い起こされ思わず目を伏せる。


「お召し物を持って参ります」


脱衣所に忘れ去られたであろう衣服を持ってくるために立ち上がった。何故か彼に触れた手が熱い。


「何から何まですまないな!」


背中から掛けられた声に短く返事をし、逃げるように部屋を出た。



伍→←参



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シルビア★姉貴 - 中村さん» もし良ければ私と鬼滅で合作しませんか?? (6月14日 16時) (レス) id: e86143b1ee (このIDを非表示/違反報告)
中村(プロフ) - NIKOさん» お読みいただきありがとうございました。感動していただけたならばとてもとても嬉しいです。 (6月11日 18時) (レス) id: 97c232aa64 (このIDを非表示/違反報告)
中村(プロフ) - Lullさん» コメントありがとうございます。沢山お褒め頂けて嬉しいです。続編もお読みいただけると幸いです。 (6月11日 18時) (レス) @page29 id: 97c232aa64 (このIDを非表示/違反報告)
NIKO - 面白過ぎですよ…涙腺崩壊させる気ですか? (6月11日 9時) (レス) @page29 id: 412fd2ba39 (このIDを非表示/違反報告)
Lull(プロフ) - 完結おめでとうございます。占ツクにはなかなか無い地の文多めのお話で雰囲気がとても好みでした……煉獄さんとの日々が丁寧に描写されていて没入がとてもしやすかったです。続編楽しみにしております。 (6月6日 20時) (レス) @page24 id: 96403d796f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:中村 | 作成日時:2023年6月4日 0時

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