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買い物に出かけた帰り道、鬼殺隊士を見かけた。派手な髪色をした背の高い男の人だった。

どこかで見た事のあるような、そんな気がする。凛々しい眉と見開かれた目。背筋は真っ直ぐに伸び、炎のような羽織が揺れていた。

任務の最中なのだろうか。この近くで鬼が出たということ?突然不安が胸を過り、それを振り払うように早足に歩き出す。

そのまま俯きがちに鬼殺隊士とすれ違った、その時だった。


「貴女は藤の花の家紋の方だろうか!!」


振り向き様にそう叫ばれる。突然のその大きな声に、思わず立ち止まってしまった。

振り返れば、真っ直ぐにこちらを捉える瞳。買い物袋を持つ手がじっとりと汗ばむのを感じる。


「その通りでございます」

「そうかそうか!着物の家紋と藤の花の香りでわかったのだ!今からそちらの家に案内して頂きたい!!」


妙に大きな声で快活に話す彼は肩に鴉を乗せていた。恐らくこの辺りの宿を__隊士を受け入れている藤の花の家紋の屋敷を探していたのだろう。


「承知致しました」


深々と頭を下げ、それからゆっくりと歩き出した。様子を見るに彼は怪我をしている訳ではなさそうだ。内心胸を撫で下ろしながら、今晩の夕食の材料はこれで足りるのだろうかと思案する。

鬼殺隊士の方は精一杯おもてなしすること。寝床や着替え、風呂の支度をし、必要なものがあればすぐに用意すること。必要な時は医者を呼び、傷を癒して差し上げること。また、詮索をしないこと。

これは私の母から教わった最低条件である。一人で迎える最初の鬼狩り様だ。酷く緊張している自分がいて、心が休まらない。


町からしばらく歩き、木々を抜け、藤の花が咲く道を通り屋敷へ向かう。鬼は藤の花を忌み嫌うそうだ。そのおかげか、否か、私は未だに鬼と遭遇したことがない。


「あと少し歩いた所に門がございます。そこを抜ければ間もなく屋敷です」


一際存在感があるのにも関わらず、やけに音が、気配がしない。不安になり後ろを確認しつつそう告げるが彼はしっかりと後を着いてきていた。


「すまないな!心遣い感謝する!」


今まで多くの隊士に会ってきた中で、一番掴めない人。

私の彼への印象はそれだけだった。



参→←壱



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シルビア★姉貴 - 中村さん» もし良ければ私と鬼滅で合作しませんか?? (6月14日 16時) (レス) id: e86143b1ee (このIDを非表示/違反報告)
中村(プロフ) - NIKOさん» お読みいただきありがとうございました。感動していただけたならばとてもとても嬉しいです。 (6月11日 18時) (レス) id: 97c232aa64 (このIDを非表示/違反報告)
中村(プロフ) - Lullさん» コメントありがとうございます。沢山お褒め頂けて嬉しいです。続編もお読みいただけると幸いです。 (6月11日 18時) (レス) @page29 id: 97c232aa64 (このIDを非表示/違反報告)
NIKO - 面白過ぎですよ…涙腺崩壊させる気ですか? (6月11日 9時) (レス) @page29 id: 412fd2ba39 (このIDを非表示/違反報告)
Lull(プロフ) - 完結おめでとうございます。占ツクにはなかなか無い地の文多めのお話で雰囲気がとても好みでした……煉獄さんとの日々が丁寧に描写されていて没入がとてもしやすかったです。続編楽しみにしております。 (6月6日 20時) (レス) @page24 id: 96403d796f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:中村 | 作成日時:2023年6月4日 0時

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