【WT】貴方と紡ぐ【短編集】 (ページ34)

今日:42 hit、昨日:45 hit、合計:13,209 hit

kn/太陽よりもページ34

※主さんのお友達居ます

高校3年生、夏。その日に行われたテニスの授業は、肌を刺すような炎天下だった。

日焼けを気にしてか、ジャージを屋根代わりにし日を遮る人達がよく目に映る。かくいう私も教室で日焼け止めを塗りたくり、万全の体制で授業に臨んでいた。近頃の化粧品はとにかく高い。日焼け止めも日常使いとなれば馬鹿にできない出費だが、下手に出し惜しみしてしまえば本末転倒だ。白さが美しさの基準だとは思わないが、やはり雪のように儚い女子には憧れる。いつか白雪姫みたいに美しく。だなんて、共通点は黒髪しか無いのだけれど。

テニスコートに足を踏み入れ、友人と会話に興じるさ中遠慮がちに周囲を見渡す。目を凝らしたその先に、複数人とウォーミングアップを楽しむ、彼。
程よく焼けた小麦色の肌が太陽光に輝き、半袖からは筋肉質な腕が堂々と露出されている。彼がラケットを振る度髪の毛が爽やかに揺れ動いて、その一挙手一投足から目を離せない。

サーブの為にボールを何度かバウンドさせて、ボールを高く上げ、腕を振り上げ思い切り下ろす。シャツからちらりと見えた肌になんとなく背徳感を覚えた。

ああ、やっぱり上手だな。ずっとラリーが続いて、コントロールも……あ、勝った。喜んでる。ラリー中は練習でもあんなに真剣なのに、終わった途端にこにこして。人懐っこいよなあ。あ、頭わしゃわしゃされてる。髪の毛綺麗だな。

「……Aってさ、きんときくんの事好きなの？」

『……………え？』

いつの間にか返事がなおざりになっていた私に、突如降りかかる友人の声。
次の時間古典だっけ？などと日常を確認するようなトーンで、彼女は爆弾をぶつけて来た。

「だーかーら、きんときくんの！こと！好きなの！？」

『ねえちょっと、声が大きいって』

戸惑う私に苛立ち、声が大きくなる友人を必死に宥める。誰かの耳に入れてしまいたくない一心で、兎にも角にも落ち着いてもらうよう頼み込んだ。

「だってA、ずっときんときくんの事見てるじゃん。さっきもじーっと。ねえ、好きなの？好きなんでしょ？」

彼女はこの手の話が大好きだ。大して恋っ気の無い私に興味深々なのか、ぐいぐい体をこちらに傾けてきている。先程までの日焼け対策は何処へやら、頭上に掲げていたジャージもすっかり手元でまとめられてしまった。こうなってしまっては、彼女は誰にも止められない。