with you3 【Kazuma.k】 (ページ7)

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「ねえ、どうだった？」
「なんか、思ってたより楽しかったし全然眠くならなかった！また他のも見たいかもしれない」
「じゃあまた行こ」
「あれそういう話でしたっけ」
「またいいとこ調べとく」
「全然話聞かないじゃん」

上映終了後、感想を言い合いながらぞろぞろと出口へ向かうカップル達より少し遅れて立ち上がった私達も、例に漏れず先程までの光景にああだこうだと言い合う。

と言うより私の一方的なそれに相槌を打たれていた。
興奮冷めやらずにくると思ってた北ちゃんは意外にも静かで、こういうのはじっくり感じていたいタイプなのかもしれない。
私の方が気持ちはしゃいでいる気がしなくもなくて恥ずかしい。
けれどマスクをつけていても窺える程に満ち足りた表情の北ちゃんは、やっぱり楽しんでいたことが如実に表れていて何だかこっちまで嬉しくなる。
あれ、いやこれ誘われたの私の方だったな。

「宮崎の星空をさ、いつかメンバーみんなで見に行きたいってよく言ってるんだけど」

「やっぱりAと2人で見たいなって思った」

……ん？あれ？私達今プラネタリウムの感想について語り合ってなかったっけ？

宮崎の星空をメンバーで見たいと言っているのは勿論私も存じ上げていて、そこから何故そう飛躍してしまったのか理解できなかった。

でも後から冷静になって考えれば、ここは私も本当の星空も見てみたいなあ～くらいに当たり障りなく返せば良かったはずだった。

投げかける側にも受け取る側にも深い意味がなければ、それはただの感想の延長線上だったかもしれない。
けれど、そういつものようにやり過ごすには多分、私は色々な物を無闇に受け取り過ぎてしまっていた。

それは今この瞬間に始まったことじゃない。

気のせいと思い込む中に閉じ込めた自惚れの積み重ねとか、会場を出ても有無を言わさずに固く繋がれたままの左手とか、横にある熱を混ぜたような北ちゃんの視線とか。

今、何の関係もないのに重ねて思い出してしまうのは真っ直ぐで静かな黒い瞳だった。

ああ、これを私は知っている。

見て見ぬフリをするのが相手を1番傷つけることも、自分が一番楽なことも、知っている。

そうしながらも肝心の言葉では、何も求められないことがむしろ心底息苦しかった。
言葉よりも雄弁な北ちゃんの目が、一体私に何を伝えようとしているのか感じたくない。
感じちゃいけない、ここを超えたら戻れないと頭の片隅でずっと警告が鳴っている。

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