with you3 【Kazuma.k】 (ページ17)

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き、決まった……。
何日もかけて用意してきたゼミの発表が終わり、拍手を貰っている時レベルに達成感のある、プレゼンテーションだった。
又の名を「面倒なことは先延ばしにするあんたの悪い癖」と後に友人に名付けられることとなるが、お分かりの通り、この時のわたしにはそんなものが響くはずもなかった。
そんなことよりも、自分の平々凡々人生センサーが、このままではやばいと警報を鳴らしていることの方が私の中では大問題だったのだから。

「まあええよ」
「えっ！」

思っていたよりも早く、そして軽く返ってきた答えは私の望んでいるものだったけど、想像していたものではなかった。
自分で言っておいてではあるが、思わず驚きの声が漏れてしまう。

「ええよ」
「え、ほ、ほんとですか？」
「けど、それいつまで？」
「え？」
「それ終わったら付き合ってくれるってことやろ？」
「あー、えっと、」
「Aがそうしたいんやったら俺はいっっっくらでも付き合ったるけど、終わりがないのはおかしいよな？」

まるで未来の事を考えずに先延ばしにしようとしていた事を勘付いていたかのような、そんな私の思考回路さえも見透かしていたかのような用意周到な答えだった。
壱馬くんとの会話でここまで冷や汗をかいて緊張して話すことなんてあっただろうか。
こんなの、最初で最後だと思う。

「じゃあ、1週間…とか？」
「ふうん、そんだけでええんやな」
「えっ」
「じゃ、決まりやな」

今日一番の笑顔でにっこり微笑む壱馬くんに、やばい性急すぎたんじゃないかと、瞬時に思い直す。

けどそれ以降は言及させてくれる余地のないような圧力を感じ、結局立場の弱い私は口を閉ざす以外無かった。

…なんか、なんだろうかこのやってしまった感は。

自分の口に出した通りに物事が進んでいるはずなのに、まるで優位に立てたような気がしない。
むしろ相手の掌の上で転がされているような、一周回って相手の思う壺のような…。

隣の壱馬くんは、そんな私のことなんてもう気にしてもいないように、マグカップの残りをぐいっと飲み干すと、んんっとひとつ背伸びをする。
ふわりと壱馬くんの匂いが香って、実家みたいな安心感すら覚え始めたそれに包まれたら、怖いものは何も無いんだろうな。
この人のもっと近くで一緒にいることができたなら、それは幸せのかもしれない。
…………て、ちょっと待て待て待て。
なんだその思考回路は。

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