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綺麗な指先と拐われた自分の指とを見つめてぼうっと意識を飛ばしていると、聞き慣れた低い声色で名前を呼ばれた。
顔を上げるとかち合った視線に、ああもう誤魔化せないんだな、と悟る。
壱馬くんが本気で何かを伝えようとしているのを何よりも痛感してしまったから、真剣な眼差しからもう、目が、離せない。
「別にこないだのは許してへんし、ほんっまに腹立ったわ。けどこのまま終わりにしたら絶対後悔すると思うねん」
「北人に、今は何も口出せない関係って言われて、確かにその通りやなって思ったし」
「だから最後にちゃんとAと話したい、話はそれからやろ」
一方的に繋がった指先にぎゅっと力を込められる。
指先から伝わる温もりが熱になって、そこから壱馬くんの真摯な気持ちが伝わってくるような気がして、でもそれに答えられるだけの言葉が上手く出てこなくて、やっぱり頷くことしかできなかった。
「初めは上手いことお互いに過ごせる程度に付き合うたらええと思っとったけど、話してて落ち着くし、なのになんか抜けとるし危なっかしくて変に頑固で気付いたら目え離せへんくなってた」
ふう、と話を区切るように壱馬くんの吐き出された一息で、思わず自分も体が強張った。
ああ、きてしまう。
あれだけ目を逸らして必死に逃げまわってきたのに、遂に決定打を打たれてしまう。
迫りくる確信に、きっと変わってしまう少し先の2人のことにドクドクと心臓が早鐘を鳴らす。
不安と緊張と憂鬱な気持ちの中に、けどじわじわと胸の内が侵食されるような、甘さを煮詰めすぎた酸っぱさを、感じないと言えば嘘になってしまう。
壱馬くんの目が上手く見れなくて俯いてしまうと、低い声で名前を呼ばれる。
釣られるように顔を上げてしまって、そうしたらもう目は逸らせなかった。
ああ、壱馬くんの言葉は魔法みたいだ。
「俺、Aのこと好き」
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ミラン(プロフ) - 壱馬のデレ感がたまんないです!続き楽しみにしています! (2022年2月7日 11時) (レス) @page18 id: 2b4fe2f5e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:も。 | 作成日時:2020年12月20日 21時