黄金時代に舞い戻りまして【稲荷崎】

129：花火大会 ページ37

▽.



いろいろあった夏休みももうあと二日


今日は稲荷崎神社で花火大会がある

告白にはもってこいの場所だよね

角名のおかげでやっと覚悟が決まって、今日この花火大会で告白する！ と意気込んできた

浴衣まで着て準備万端だ
浴衣きると３割増しっていうし？

でもその着付けのせいで待ち合わせに遅れそうだ


『ごめん、お待たせ！待った？』
「あ、A〜！うちも今来たとこ〜！」
『あ、まじかよかった』


お気づきの方もいるだろうが待ち合わせといっても、侑と二人きりで行くわけではないのだ

流石に二人きりで行こうとは誘えなかったため、安定の男女バレー部で行くことになった


まあでも、角名に協力してもらってなんとか２人きりになれたらなー

なんて思っていた私は、のちに後悔することになる


『あれ、てか男子勢は？着付けないから早いと思ったんだけど』
「あー、今トイレ行っとるわ。てか、浴衣めっちゃ似合っとるやん」
『ありがとー！そっちこそ似合ってるー！』

なんてお互いを褒め合ってると、トイレの方から男子が戻ってきた


「おーおかえり」
「うぃー、ってA来たんだ」
『うん。お待たせー』

自然と侑の方に視線を向けると、浴衣ではないが私服の侑が

別に初めて見るわけじゃないんだけど、今日告白するんだって思うと、鼓動が速くなる

ふと、視線があってすぐにそらす

心なしか耳が赤く見えるのは、私の願望なのだろうか


「ちょいとお二人さーん。二人の世界に入らんでもらえますー？もう全員揃ったでー」

「なっ、別に２人の世界になんて入っとらんわ！！」
慌ててわたしも頷いてしまう

「はいはい。ほな行こか」
まだ、鼓動は速いまま歩き出した



．



花火が始まるまでの時間、屋台を巡ることになり私の手には食べ物ばっかりだ

食い意地張っとるな、と侑に笑われてうるさいなあと返す

射的やボールすくいなども楽しんで、それからハッとする


…あれ、普通に楽しんでるけど本来の目的って告白だよね

…てか、さっきから全然2人きりになるタイミングなんてないんだが

もうすぐ花火始まるよ？

そしたら２人で抜け出すなんて無理じゃない？


なんてごちゃごちゃ考えていると、いつの間に歩き出していたのか遠くにいる皆

『うわ、ちょっ待って！』

こんな人混みじゃ、多分聞こえてない

慌てて走り出し、角を曲がった途端ブチっと何かが切れる音が

あ、鼻緒切れた！？やば、転ぶ



そう思った次の瞬間、私は誰かの腕の中にいた


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