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その瞳がその言葉が ページ7

有馬かなが“10秒で泣ける天才子役”と言われ始めたのは、トップ女優であるAと共演した一話きりのスペシャルドラマがきっかけだった。

原作である小説の主人公視点ではなく、サブキャラにカメラを向けた謂わばスピンオフ作品の実写化だ。

一風変わったドラマにメインキャラとしてキャスティングされたのは、Aと有馬かなだった。


後宮が舞台であり、Aはお妃役で有馬かなは妃の娘である公主(ひめ)役。

物語のラスト、罪を犯した女官の責を全て背負って妃は幼い娘を残して後宮を出る。

そこに娘の公主は駆け寄って涙を流す。

言葉を交わさない親子の最後の触れ合いが、この物語の美しいラストを飾る。

そういう筋書きだ。



「ひめ役の有馬かなです!よろしくおねがいします」

「よろしく有馬かな。私は藍紅(ランホン)妃役のA」



有馬かなは今までにないほど興奮していた。

あのAと共演できるのだと。

元からテレビ越しで彼女を見ていたが、やはり生で見るのとは比べ物にならない。

このラストシーンで2人はクランクアップになるが、それまでの撮影で一層役者としてのAへの憧れは強くなった。

彼女は間違いなく“ホンモノ”だったのだ。


ただ一つだけ、有馬かなが泣く演技をするのはこれが初めてだという懸念があった。

何度も練習して、リハーサルでもOKを貰ったが、いざ本番になってAのホンモノの演技を前に上手くできるかわからなかったのだ。





カチンコが鳴って“元お妃”はゆっくりと歩き出す。

たった一つだけの心残りに背を向けて、誰とも目線を合わせずにただ門だけを見据える。

そこに近づく小さな足音が1人分。



『はっ、……藍紅(ランホン)さま!』



元妃の娘である公主(ひめ)だ。

形だけでも公主は絶対に彼女を“母上さま”と呼んではいけない。

お妃さまと呼ばれる資格も既に無い。

故に彼女は、もとの名前である“藍紅”を慣れない言い方で呼ぶ。

娘に呼びかけられて彼女は振り返る。


ここでアクシデントが起こった。

公主が__有馬かなが衣装に躓いて転んだのだ。



台本にはない事故だ。

マイクに触れない場所だがスタッフらはざわつき、監督にカットをするべきだという目線を送った。

しかし監督は何も言わず、ただ一点を見つめた。

目線の先にはAがいた。

誰も彼も虜にしていく→←そんな言葉にまた一人堕ちる



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HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» ありがとうございます!魔女ちゃんのお相手は誰になるんでしょう… (10月21日 22時) (レス) @page15 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 更新ありがとうございます!!作者さんの立ち位置が自分と似過ぎていて滅茶苦茶分かる!と思いました、丸。 (10月16日 22時) (レス) @page13 id: e0721d2717 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - ふぉん鴉さん» 神作なんて光栄です!頑張ります。ふぉん鴉さんコメントありがとうございました。 (7月23日 12時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
ふぉん鴉(プロフ) - 自分の中での神作有難うございます。゚( ゚இωஇ゚)゚。これからも頑張ってください!応援してます(oˆ罒ˆo) (7月23日 6時) (レス) id: ecacc3dc55 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - らーさん» 頑張ります。らーさんコメントありがとうございました。 (7月22日 16時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:HANON | 作成日時:2023年7月16日 1時

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