駆け足で進め ページ6
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『先生、先生、』
かけ足で松下村塾のいたるところを駆け回る。授業の途中だと言うのに、勝手に銀時が塾を抜け出したからだ。
あれから、塾生は増えた。
だから「少しばかり自習していてくださいね」なんて言ったらすぐにサボる子もいた――それが銀時である。私は皆の集中を切らさぬようにと静かに部屋を抜け出し、先生を探しているのだが。
(......いない)
これで全部の部屋を回り切ったはずなのに、と長い溜息をついた――次に思いつく策は、ただ一つしかなくて。
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『......久しぶりの外』
なんて感想をぼそりとつぶやいてから、右側の道を進む。昼頃の空は青く澄み渡っていて快晴、といったところだった。最高温度、何度だよ。
自分なりの全速力で銀時を探し回れば、延々と道だけが続いていた。脳裏で「無限ループって怖くね?」と塾生の言っていた事を思い出すが――どうやらそんな事は無かったらしい。
(こんなの、あったんだ)
太陽に照らされた銀色の鳥居。要するにここは神社らしい。
こんなところにいる訳は無いだろうなぁ、なんて思いながら階段を上がる。
――すると、誰かの声が聞こえてきた。
「やはりここにいたか。......また塾で大暴れしたらしいな。国の未来を担う俊英が集う名門塾も、貴様という名の器をおさめるには足らぬというのか、高杉?」
「笑わせるな桂。俺は真面目に稽古しろっつーから本気を出しただけだよ」
きっと社からはこちらなんて見えないだろう。こっそりと登り切れば、木の後ろに体を隠して続きを聞いてみることにした。
なぜか、何かがひきつけられたのだ。
「それでもお前は幸せなのだぞ。世には貧しさゆえに文字を読めぬ者もいる。なりたくても侍になれないものもいる」
「......流石は才覚だけで特別入門を許された神童はいう事が違うな」
(才覚?神童?)
分からない言葉が二つ出てきたけれども、きっと凄い人なんだろうと思って顔をのぞかせた。そこに見えたのは――半年前に、墓前で泣いていた彼であって。
『あ......!』
つい驚きで声を上げてしまい、二人がゆっくりとこちらを振り返った。
不思議そうな目でこちらを見れば、「誰だ」なんて声が耳に届く。
......意を決して、木陰から歩み出た。
『この前はありがとうございました!!』
そして数秒後に気付くのである。この前って何時だよ、と。
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KR - 幻想郷の神になってみたいさん» コメントありがとうございます!ツッコミ有難いですww (2017年3月9日 18時) (レス) id: 3a54a61494 (このIDを非表示/違反報告)
幻想郷の神になってみたい(プロフ) - 最後まで読んだ時に思わずお前かいっ!(゜д゜)って突っ込んでしまいました……完結おめでとうございます! (2017年3月9日 9時) (レス) id: 320209cd0b (このIDを非表示/違反報告)
KR(プロフ) - まめりんごさん» コメント有難うございます!桂さん良いですよね......!凄く分かります笑。頑張りますね! (2017年1月26日 22時) (レス) id: 3a54a61494 (このIDを非表示/違反報告)
まめりんご - 続編おめでとうございます!私は、桂がダイッスキなので、ホント、この小説にはまりました!!応援してます! (2017年1月26日 19時) (レス) id: 93fa4ba951 (このIDを非表示/違反報告)
KR(プロフ) - 苺(まい)さん» コメントありがとうございます!!と......とてつもない勢い......だと!?嬉しくて跳ね上がりそうでした、更新頑張りますね笑 (2017年1月22日 9時) (レス) id: 3a54a61494 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:KR | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/wirall05201/
作成日時:2017年1月21日 22時