春囲う Ⅲ (ページ17)

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ロンリーチルドレンページ17

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今日は何だか暖かい気がする。

7月も近いから気温が高くなってきたのかな。ここ最近雨が続いていたから梅雨ももう時期終わりを告げようとしているのかもしれない

それに、この前先斗に会ったからかな。一年前を思い出す。

懐かしいなあ、この道を通って事務所に行ったんだっけ

周りに沢山ビルが聳え立っているから道も同じように見えて、スマホも使えないから途方にくれて……

『あれ…？わたしどうやって事務所にたどりついたんだっけ…』

家から駅までの道、電車に乗っている間にちゃんと辿り着けるかどうかの不安事。それで、駅にちゃんとつけて安心して…スマホが使えなくて、駅の地図を見ても載ってないから歩き回ってそれで……それで…

わからない

近頃こんな気持ちになることが増えた気がする。思い出せないことは苦しいこと。知ってるはずなのに知らないのは薬みたいに苦い気がしてこの後味はどうすればなくなるんだろう

『とりあえずお水飲も…』

建物の影に寄って冷たい水を流し込めば若干頭がキーンとする。あ、あと半分しかない
でも、この景色も何だか懐かしい気がして変な感じがする。建物の影何て通らないのに何でだろう…

疑問に思いつつも時間を確認すれば若干時間が押している。スタジオを借りてるからもう少し早めに行った方がいいかもしれない

歩き初めて皆は今頃何をしてるのかな何て想像してみる。暖かいからお散歩してるのかな、それとも家でゲームでもしてるのかな

あ、そうだ。どうせなら今日の配信はにじ鯖観光の続きでもしてみよう。見て回るだけでも楽しいかも

春が終わって夏へ移ろいで行くこの季節

いつの間にかピンク色が見えなくて緑が目立つようになる。気づかない内になくなってしまうのは悲しいけど青や紫といった小さな変化を見つけるのが楽しい時期

あ……

春という単語で一人の人物を思い浮かべる。

春や夏は貴方に似合うと勝手に思ってる。でも貴方は寒色系が似合うから冬も似合うと思うし結局は秋も似合うと思うの

推しという存在だから盲目的なのかなって考えて、だけどそんなことはなくて事実だと思うからこの話題はおしまい

『……風がつめたい』

今日は暖かいからこの風が心地いい。周りと違う自分と同じだな何て思いながら足をもう一度動かした。

もっと頑張ろう

ちゃんと地に足がつけるように

隙間を埋めるために

先行く人々は軽快な足取りで遠くを見つめる。自分も道を歩いているはずなのに進めていない気がした。