【M!LK】漂流シアター～Winding Road～ 2 (ページ45)

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突然この映画館に現れた謎の白い服の青年。
彼は自分を山中柔太朗と名乗った。
透き通るような白い服に白い肌。
本当にそこに存在しているのか、それすら疑問に思うほど、この映画館の中で彼の存在は異彩を放っていた。
まさしく幽霊と呼ぶにふさわしい。
けれど、意思の疎通はできるし、何より、ちゃんと足がある。

柔太朗「当たり前だろう？僕は幽霊なんかじゃないんだから」

彼はそう言って悪戯に微笑む。
けれど、幽霊じゃないと言うのなら、俺には一つだけ疑問が残る。

勇斗「じゃあ、今までどこにいたんだよ……。急に現れて……」

俺達がこんな状況に陥ってから2日経っている。
その間、こいつは一体どこにいたって言うんだ。
俺達の知る限り、あの日このシアタールームで映画を観ていたのは、確かにこいつと舜太を除く、俺、A、仁人、夏生さん、太智の5人。
舜太は売店の裏で寝ていたというし、7人目であるこいつの姿なんて、誰一人として見ていない。
舜太に連れられてこの映画館を色々見て回った時にも、もちろんこんな白くて目立つ奴がいれば、すぐ見つかるはずだ。
けど、やはり俺達はこんな奴見た記憶など一切ない。
今日になって、皆白い幽霊と言う認識で、突然俺達の前に現れたと言って良い。

柔太朗「どこにいた、か。
僕はずっとここにいたよ。
ここで映画を……そう、映画を観ていた。
そして、もちろん君たちの事も見ていたよ」

勇斗「……」

何だか答えになっていない。
ここで映画を観ていたのなら、絶対俺達が見つけてる。

仁人「嘘つくなよ……！俺はお前みたいな奴見てないぞ？！
どっから来た？！」

柔太朗「だから、僕はずっと"ここ"にいたよ。
吉田仁人君？」

仁人「はぁ？！な、何で俺の名前……」

柔太朗「もちろん、皆の名前も知っている。なぜなら、僕はずっと君たちの事を見ていたからね」

勇斗「……」

彼の口にする言葉が、俺にはよくわからない。
まるで、本当にここにずっといて、これまでの何もかもを見ていたかのような口ぶり。
正直、とても不気味に感じる。
一体こいつは何者なんだ。