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何だったんだ、今の。
いまだに恐怖で手も足も震えている。
幽霊の類など、これまで信じてこなかったのだが、こうして訳の分からない体験をしてしまうと、体の芯から恐怖を感じてしまっている。
こんなところ、一秒でも長居は無用だ。
俺は顔面から噴き出す汗を袖で拭うと、急いで皆の元へと戻ることにした。
客席を飛び越え、シアタールームの出入り口にまっしぐら。
早く皆に、Aに逢いたい。
そして俺は、転がるようにシアタールームの扉を潜り、ロビーへの廊下に飛び出した。
勇斗「はぁ……はぁ……」
額から頬を伝い、顎からしたたり落ちる汗。
こんなとこ、Aに見られるのは恥ずかしいけれど、もはやそんなことは言ってられない。
ここには、やはり何か得体の知れない何者かが潜んでいるのかもしれない。
勇斗「やべぇ……。俺、今めっちゃ怖い体験……」
俺はたった今体験した恐ろしい出来事を誰かに聞いてほしくて口を開いた。
けれど、なんだか様子がおかしい。
とにかく皆の反応が薄い。
まぁ、別にこんな状態の俺を心配してほしいわけじゃないんだけど。
勇斗「A……？」
顔を上げてAの顔を覗き込む。
すると、Aは全然俺の方を見てくれていない。
なんだよ、冷たい奴だな……。
俺は人生で初めてぐらいの怖い思いしたって言うのに。
それにしたって、俺に全然反応なしって言うのもちょっと変だ。
しかも、よく見ると、Aだけじゃなくて他の皆も全然俺の方なんて見てない。
一体皆どこを見てるんだ？
俺は、皆の視線を追ってみた。
どうやら、彼らは俺の背後、つまり、シアタールームの方を注視している。
それに、段々と顔色が青ざめ、恐怖で目を見開いていく。
勇斗「おい、A……？」
A「勇斗……あれ……」
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作者名：milkssss | 作成日時：2020年8月11日 17時
