三月。2 ページ2
不思議だった。
初めてあった、何処の誰かも分からない相手なのに。
翔さんは俺の手を引っ張ってくれた。
この手を握ってくれた相手なんて母さん位しか居なかった。それもずっとずっと小さな時だ。身内で無い誰かに手を握って貰うなんて初めてだった。
凄く温かだった。
潤君は他の友達と居ても常に俺を気にして仲間に入れてくれた。だから俺はあの教室で独りになる事が無かった。
………初めてだった。
相葉さんは何時も誰にでも同じ接し方をしてくれた。同じ目線で同じ立場で話せた初めての人だ。一緒にバカやって一緒に叱られて、一緒に笑ってくれた。
きっと俺にとって初めての友達だ。
そして………。
隣に居てくれた。
どんな時も、ただ隣に居てくれた人。
誰かが居て気にならない所か、暖かで気持ちが良いなんて考えた事も無かった。
話す必要が無くて、そこに居る。
ただそれだけ。
だけどそれが幸せだった。
嬉しかった。
ふとした時にある温もり。
泣きたくなる位に嬉しかった。
初めてだった。
人が暖かいと思ったのは。
人と居たいと思ったのも。
ううん。
違う。
貴方だから。
貴方だったから。
俺は、貴方と。
大野さんと生きていけると思ったんだ。
貴方となら生きていきたいと思ったんだ。
「和君？どう、終わりそう？」
「！！あっ、はい！あっ、終わってます！」
「ん。疲れちゃった？」
「あ、違います。ちょっと思い出しちゃっただけです………。」
なかなか降りて来ない俺を心配して見に来たみたいだ。
荷物の持ち運びで扉を開けたままにしていたから、直ぐ後ろに居た事に気付かなかった。
大野さんは俺と視線を合わすと、納得したかの様に頷いてから、綺麗になった部屋を見渡した。
「あっという間だったよね。」
「はい。」
「特に和君は一年半だったしね。」
「………はい。」
「うん。だけどね。」
感慨に耽っていた感じだったのに、大野さんは突然おどけた様子で俺に視線を戻した。
「？」
「次は一年だ。もっとあっという間に終わっちゃう。それも楽しければ楽しい程にね。」
「そうですね。」
貴方とならきっとあっという間だろう。
「でもでも。」
「何です？」
「その先はもっとあっという間かもしれないよ。きっとここよりずっと………ね。」
貴方が隣に居てくれるのなら、きっと。
「はい。そうですね。」
間違いなく、明日もあっという間に過ぎて俺はその次の日を楽しみに待つのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 134人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
YUY(プロフ) - 亜希子さん» はじめまして。書き込みありがとうございます。ホントごめんなさい。ある程度は書いてあるのですが、需要と供給を考え楽屋優先になってしまった現状です。出来るだけ早くお届け出来るように頑張ります。また良かったら気軽に来て下さいね。ありがとうございました！！ (2018年10月18日 18時) (
レス) id: 846e4e6c3c (このIDを非表示/違反報告)
亜希子(プロフ) - はじめまして。続きが読みたいです〜(⌒0⌒)／~~ (2018年10月18日 10時) (レス) id: 7fa4b72743 (このIDを非表示/違反報告)
YUY(プロフ) - はるのさん» いえいえ、こちらこそお待たせしてすみませんでした。去年はね、色々あったからね。(笑)楽屋の合間に書いてく予定ですのでまた良かったら読んで貰えたら幸いです！！ (2017年5月10日 21時) (レス) id: 846e4e6c3c (このIDを非表示/違反報告)
はるの(プロフ) - YUYさん、待ってました〜(´；ω；`)再開嬉しいです。あっちもこっちも素敵なお話でありがとうございます。ご無沙汰して申し訳ありません。これからも楽しみにしています。 (2017年5月10日 19時) (レス) id: 6484d9474a (このIDを非表示/違反報告)
YUY(プロフ) - ちえさんさん» いえいえこちらこそ今まで見て頂きありがとうございました。もし良かったら、今後とも宜しくお願いします。 (2016年2月25日 21時) (レス) id: dde059238c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：YUY
| 作成日時：2016年2月15日 15時
