宙よ光よ手を差し伸べよ(5) ページ30
なるほど。監督が糾弾されたり、進退を求められたりする先は学校だけでないということか。選手は何も分かってないわけだ。勝てば監督を留保できるなんて考えていたオレたちは甘い。大人の世界はそんなに簡単じゃないんだな。
「机上の勉強ができたところで、オレたちなんか社会を知らないんですから買いかぶりですよ。愚かでした?だったらオレにはなんの得があんの?オレはプロ野球の世界に行きたいけど、それだって金もらって親父を楽させたいって、それが一番の目的なんですよ」
フッと笑う音が漏れた。伊藤会長の口角が上がっている。金というキーワードに触れて、オレの料理の仕方があると踏んだか。
「金が欲しい?そうは思えないな。君が本心で求めているものは宇宙だ」
「……は?」
オレは本物のマヌケになった気分だった。
「ビジネスの話をしに来たのなら聞こう。御幸くん。ビジネスは宇宙だ。人生は宇宙だ。この世を動かしているのも、我々が生まれ、そして死にゆくのも、宇宙が決めていることだ。宇宙を手中にできるものが勝つ。それを君に教えてあげよう。それで夏も勝てる」
「ちょっと……。何言ってんのか全く分かんないっす」
オレはデカデカと掲げられた掛け軸に目線を移しながら、脇に感じるヌルりとした汗に緊張を拭えなかった。
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作者名:ほさつ1秒83 | 作者ホームページ:https://twitter.com/hosatsu1_83
作成日時:2021年8月29日 19時