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大貴 side








返信の早くなった彼女からのメールを見つめ、部屋の天井を仰ぐ







俺は、これからどうしよう







そんなことを思って、なんとなく外へ出た







冷たい風が吹いて身を縮める








遊園地に行ってから俺たちは前よりもっと会うようになって、今までなら絶対に足を運ばないようなお店にも時には行くようになった







ふらふらと緑の中を歩いていると、見慣れた姿を見つけて足を止める








背の高いマッシュルーム







「いのちゃん?」







そう呼ぶと、彼は振り返って普段通りの笑顔を見せた








「あれ、大ちゃんじゃん」


「何してんの」


「知り合いのコンサート聴きに行ってて。その帰り」








あれ、と違和感を覚えたのは伊野尾ちゃんが何かを言ったからじゃない








彼女は最近、ピアノの話をしなくなった








「A…さ、ピアノ弾いてる?」


「…え?」








伊野尾ちゃんは驚いた様子で目を丸くする








「あれ? 大ちゃんも納得したんでしょ?」


「は? なんの話だよ」


「留学、蹴ったって話」








次の瞬間、頭の中が真っ白になった







そんな話、聞いた覚えもない








「留学の話が来てたんだよ、しかも補助金まで出るのにさ…Aちゃんは日本に残って就職するの一点張りで」








ピアノはもう、諦めたのか








あんなに大好きだったのに








俺の愛した彼女のピアノ








それを、手放すのか








「…ごめん、大ちゃんも知ってるもんだと思ってた」









伊野尾ちゃんが申し訳なさそうに顔を伏せたのにも気づかずに、走り出した







俺の、ためなのか







俺が居るからなのか







恐れていたことが、現実になってしまった








彼女は俺のために生きたらいけない








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koto_arioka(プロフ) - えつさん» いえいえ! (2019年1月12日 23時) (レス) id: 5e0eece957 (このIDを非表示/違反報告)
えつ(プロフ) - koto_ariokaさん» ありがとうございます^^ 嬉しいです! (2019年1月7日 11時) (レス) id: 94efd89660 (このIDを非表示/違反報告)
koto_arioka(プロフ) - すごく素敵なお話でした(*´ω`*)♪ (2019年1月7日 1時) (レス) id: 5e0eece957 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:えつ | 作成日時:2018年11月16日 21時

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