White melody __ Daiki.A (ページ44)

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肌寒い風の吹く土曜日

俺の家に迎えに来た彼女は、今日も真っ白で

雪みたいだった

「早く行こ、大貴くん」

「いいから、もうちょい待って」

玄関から当たり前のように部屋の中に上がると、彼女は鏡を覗き込む俺の周りをぐるぐる回る

「…寝癖」

「もぅ！気にしてんだから！今直してるから！！」

ぶすーっと睨む俺を嬉しそうに笑うと、近くにあったワックスに手を伸ばす

「貸してみなさい」

俺の手を退けて、彼女の小さな手が頭に触れる

それだけでまだ、ドキドキする

「いっそのこと分け目変えちゃおうよ」

「それは絶対ダメ！！！」

彼女に髪型を変えられそうになりながら、なんとかしつこい寝癖が言うことを聞いた

「山田あと10分くらいで着くって」

モテたいがために免許を取った山田は、彼女のために車を買った

ほんとに、なんというか

「あのさ、」

突然、彼女が俺の方を見つめる

まっすぐに、俺に向けられた瞳

「ん？」

「私さ、そろそろ卒業じゃん」

「あぁ…そっか2年制だもんね」

「うん…就職しようかと思ってて」

「え？！」

彼女はこれからもピアノを弾き続けていくものだと思っていたから驚いた

就職なんかしたら、ピアノを弾く時間なんてなくなってしまう

「いいの…？」

「うん…ピアノは趣味で弾くよ」

「いや、勿体ないよ」

「音楽なんかじゃ食べてけないんだよ」

じゃあ、俺が…そう言おうとしたところで、山田から入った電話が俺たちの微妙な空気を引き裂いた

「…着いた、って」

「うん、行こ」

彼女はいつもの笑顔に戻って腰を上げた

俺はひとりモヤモヤしながら、彼女の背中を追った

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