White melody __ Daiki.A (ページ31)

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大貴 side

コンクールで銅賞に輝いた彼女は、その日から目まぐるしく忙しくなった

先生からも褒められ、審査員の方からも絶大な賞賛を得たらしい

今度はあっちの演奏会、練習、ちょっとしたコンクールがあって、また練習、練習練習…

彼女と会える時間は、どんどん減っていった

だから、と言ったら自惚れだと言われるだろうが、彼女はあまり笑わなくなった

3日前の朝から返信の来ないメールを待つために携帯を抱きしめていた俺もとうとう萎えていて、頭の上でした声に反応できなかった

「なに大ちゃん、倦怠期？」

「うっせーよ、お前んとこみたいに喧嘩したことねぇから」

「愛菜こえーんだよね…じゃなくてさ」

山田は呆れて俺の隣の席に座る

と、俺になにかのチケットを2枚差し出した

「Aちゃんの趣味とか分かんねぇけど、音楽やってたら楽しめるだろ」

それは、俺でも知っているような有名な作品のミュージカル舞台で

彼はそのチケットをパタパタ揺らして微笑む

「土日なら学校ないし、これやるよ」

「……たぶん無理、練習あるから」

俺は山田の手を振り払うと、また携帯に目を戻して机の上にうなだれた

「ほらほら、もうここんとこずっとそんな顔してるよ？大ちゃんだって、嫌なんでしょ？このままじゃ」

俺だって、会いたい

俺だって、寂しいし、誰かに口説かれてないかな～なんて心配したりもする

でも、彼女は俺とは違うんだ

才能があって、夢があって、頑張りたいことがある

それを俺が、こんな奴が壊したらいけない気がした

山田は大袈裟にため息をつくと、強引に俺にチケットを握らせて勝手に授業の準備を始めた

「いいか、俺は渡したかんな。ぜってぇ行けよ、高かったんだから」

俺に目を合わせようとしないで、山田は言った

「山田がチケット余ったからくれたって言うんだぞ」

山田が、わざわざチケットを買って用意してくれたんだ

俺たちのために、こんな友達のために

そう、彼女に伝えようと思った

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