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脈があるような態度は取る。けど、言葉には決して出さない。恋は真っ直ぐが命。外見よりも内面を深く知ってからどこからともなく付き合いたい。直線的な恋愛を好んできた私にとって、曲折した駆け引きをするのは初めてだった。
「でもお前の好きなやつさ、お前から好きって言われること望んでるんじゃない？」
『同じことだよ。私だってそいつから好きだって言ってもらえることを期待してる』
しかも10年来の親友と。一筋縄ではいかない男だとは言え、自分がギャンブルのような恋をするとは考えていなかった。
「……そもそも、どこが良かったわけ？」
ふっかはどう転んでも私に言わせるように探り探りだ。
『私ね、そいつとだけは絶対に付き合いたくなかったのね？ さっきも言ったけどモテる自覚があって、自分からは絶対気持ちを伝えようとしない。ムカつくくらい優しいし……』
「言うじゃん」
『言ってやらなきゃ気が済まないよ』
ふっかはどこか照れているように見える。太い黒縁の丸メガネの奥が揺れている。
『おまけに遊んでるやつでね。親友としては申し分ないくらいいい奴だけど、男としては最低だった』
「うん」
『それがもったいないなって思ったの。せっかくの素敵な性格を遊び1つで棒に振ってさ。軽い男だって思われてるのが嫌だったし、もどかしくて仕方がなくて。だから言っちゃったの。魅力ゼロ以下のマイナスだって。自分をもっと大切にしてって』
ふっかが自分で自分の首を絞める所を見たくなかった。自分の価値を自分で下げていく姿が見ていられなかった。
『そしたらどうなったと思う？』
「……遊ぶのやめたとか？」
『大正解。やめたの』
だから、失礼を承知の上で意見を伝えた時、まさか本当に遊びをやめるなんて思っていなかった。
“遊ぶのはやめたんだよ。誰かさんに魅力マイナスって言われてショックだったから”
あの時驚いた顔は見られたけど動揺したことまではふっかも察していないはずだ。
『そこで見直したんだよね』
「ちゃんと分かってくれるやつなんだって？」
『うん』
あの時から私の中でふっかの存在が変わった。心を揺さぶられた。親友の1人に過ぎなかったはずなのに、少し特別な存在になった。
『でも本気で付き合いたい……というか、ちゃんと男性として意識したのは結構最近だったの』
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月3日 22時
