Time goes by (ページ35)

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30分と言いながらもタイマーを設定しているわけじゃない。おまけに2人とも没入しやすい。どれくらい経ったか分からないけれど、落ち着いた頃には夜が深まって街が少し静かになっていた。

「A、A」

『あっ、はい！』

「そろそろやめようか？」

真冬に外で汗をかく。汗が引いてくると少し寒さを感じる。ベンチに戻ろうと振り返れば、男2人が座っていた。

『小西さん』

「……ん？」

『荷物狙われてますよ。ちょっと待っててください』

え、危ないよ、と戸惑いを隠せないのに目もくれず、私は彼らに近づく。細マッチョとマッチョより少し身長が低く細身でバケットハットを被るメガネ。彼らしかいなかった。

『何してんの、辰哉くんも照も』

「お前こそ何してんの。男と2人きりで」

ふっかに呼び出されて迷惑、と照は誰を恨んでいるのか分からないけれど不機嫌な声を出した。

「……自主練するって連絡くれたのはいいけど、時間が書いてなかったから心配したべ？つーか誰なの？あの人」

『元彼』

「あ！？元彼！？」

『そう。話したいことがあるって』

「……A、ちょっと待ってて。つーかここにいて」

『あっ、じゃあこのリュックも持って行って？』

「パシるなよ！いいけど」

いいのかよ、と照にツッコまれつつ、辰哉くんは小西さんのリュックを持って広場へ走った。

「あいつ、すげえ焦ってたよ。いつ帰ってくるか分かんねえって」

『ごめん。時間のことすっぽ抜けてた』

「別に意味はなかったわけ？」

『ないね。ついでに言うなら、』

小西さんが言いたかったことも分かってた。照は目を丸くした。その上で私は彼と2人きりになった。聞いて、彼の気持ちに答えられないことを自らの口で切り出そうと思っていた。

『切り捨てる優しさもあるかなって。諦められない気持ちに踏ん切りを付けなきゃ、小西さんは前に進めないと思ってる。小西さんもそれを分かってたから2人で話したかったんじゃない？私にバッサリ言われて諦めたかったんだと思う』

「……そっか」

俺ら悪いことしたな、と照はきまり悪そうに眉を下げた。

『小西さんは思わぬ形で諦めざるを得ない状況になっちゃったかな』

2人の対峙を眺めながら思う。そそっかしい自分を認め、共に歩もうとしてくれる人が2人もいた。でも選べるのは1人だけだ。