Time goes by (ページ45)

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部活は楽しい。楽しい時間はいつまでも続いてほしいけれど、今日は違った意味で終わらないでほしい。

「Aってよく深澤先輩と一緒にいてもドキドキしないよねぇ」

『全然しない。多分タイプじゃないんだと思う』

ふっかの女達に殺されるかな、とAは微笑みながらも毒づいた。相手の女の子も特段俺が刺さるわけではないらしく、分かる、と同意した。

『性格はいいけどっ！』

サポーターをはめ終えたAは軽くストレッチをして可憐に宙を舞った。謎の叫びこそあるものの、悔しいくらいに美しい。ロンダート、バク転の合わせ技をあっさり決めてしまう。身体能力が男に負けないどころか男を超えている。

「すげえ……」

俺達が所属する器械体操部はその名の通り本格的に器械体操もやるけれど、できるようになった技を組み合わせてダンスもする。俺達の高校は全ての生徒が部活に所属するのを奨励している。芸能コースである俺達は進学コースの奴らと同じような活動はできないけど、大半が部活をしている。

「Aちゃん、すごすぎ……」

Aは入学したての頃は手術明けだったからドクターストップがかかり、運動をすることができなかった。部活には入っていたけど、マネージャーとしての働きに従事していた。彼女が本格的に運動を再開したのは6月だった。それまではリハビリに励んでいたらしい。

最近になってマネージャーから競技者になったAは骨折前に堪能だったというアクロバットを再開した。今では部員の補助がなくてもロンダートやバク転を決められる。

『ロン宙もできるかな……』

Aは一瞬首を傾げる。顔つきを変え、助走をつけてロンダートバク宙を決めた。柔らかいマットにドスッと着地したAは嬉しそうに笑っている。

『できた！』

部員の視線をかっさらう。男も女も関係なく拍手してAに尊敬の眼差しを向けている。

「どうしよう、照」

「ん？」

「深澤の女が藤井の女に乗り換えそうなんだけど」

ただでさえAは文化祭のクラス劇で王子様を演じてあの王子様は誰だ、と噂になるほどだった。

「はあ？」

「あんなの勝ち目ねえって……」

深澤派の女達の中にはAのファンを兼任する子達も少なくない。女の子達の目を再び向けるには、俺が男を見せるためには、おばけ屋敷に入るしかないのか。