来るはずの未来 ページ7
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稽古前、いつも立ち寄るコンビニで買った雑誌をトートバッグから取り出す。
表紙は雲1つない青空の元で撮られたらしい。色とりどりのブーケを両手で持ち、抜群のスタイルと高身長が引き立つマーメイドラインの純白ドレスに普段のメイクよりも濃いメイク。Aが本物の花嫁のようだ。
「はあ……」
数年前、Aは結婚情報誌のイメージキャラクターを務めていた。あの時は阿部ちゃんに教えてもらった“豚に真珠”を使い、ウェディングドレス姿の彼女を弄っていたけれど、今思うと相当に失礼だった。
本当はあの時からものすごく似合っていた。直視できないくらいだった。付き合ってから自分の発言を省みると殴ってやりたい。
「どうしたん？ ふっかさんがため息なんて珍しい」
表紙を眺めながらやるせない気持ちになっていると、康二が俺の隣に座った。
「ん？ なんでもねえよ」
「なんでもあるからため息ついたんやろ？」
「本当に。何もねえんだ」
「ほんまに？」
俺の真髄を覗こうとする真っ直ぐな瞳に勝てず、俺は目を逸らした。
「やっぱなんかあるやんかぁ」
頼ってやぁ、と康二は俺のそばに身を寄せた。
「……いや、さ。いつになったら彼女と結婚できるんだろうなって思って」
「藤井Aさん？」
「おう」
買った雑誌を康二の目の前に置く。康二にはつい最近、俺の彼女がAだとカミングアウトしたばかりだ。
「Aさ、俺の1個下なんだ」
「うん」
「……もう、そういう歳じゃん」
「そうなぁ」
芸能界でも結婚ラッシュが続いている。俺らの世代にも入籍したり、妊娠や出産の報告をしたりする同業者が増えた。同業者でなくとも同級生から結婚式の招待状が届くようになった。
「今年で4年になったんだよ。付き合って。普通なら結婚してんじゃん。子供が生まれててもおかしくねえのよ」
もし俺がもっと早くデビューしていたら賛否はあったにしろ、籍を入れるだけでもできたかもしれない。
「俺がアイドルやってっから、Aに我慢させてるんじゃないかって思ったらやるせないんだよ」
俺以外の誰かと付き合えていたら、Aは20代のうちに結婚していたと思う。今共演している元彼だったら、相手の年齢もあって早く結婚できていたはずだ。
男の子ならとびきりイケメンの、女の子ならとびきり可愛い子供が生まれたはずだ。
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作者名：あおやなぎ
| 作成日時：2023年3月27日 21時
