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大丈夫なんかじゃない_6 ページ13

そして、


“陣平ちゃんのそういう顔は怖ぇからなぁ?女の子、逃げてっちまうぞ?”


松田の脳裏にふと思い出された萩原の声。
それは、昔から、からかい気味に何度も彼に言われたことで。


「…わ、悪ぃ。別に、怒ってる訳じゃねぇ」

『…』


黙り込んだままのAの横に座り、その顔を覗き込んだ松田。
警察学校にいたのだ。松田の凄みのある顔に怯むような人物じゃないことは分かっている。
でも、今の状況を考えれば。
これまでの状況を考えれば。


いつ、心が砕けてしまってもおかしくないと、
不器用で傍若無人な松田とて十分に理解できていた。



すぐ隣にいる松田に気づいているのか否か。
Aは黙ったまま、どこか心ここに在らずといった様子で。


「…だ、大丈夫か」


松田は思わず、そう問いかけた。



そうして、
少し間を空けて、


『…大丈夫、…です』

と呟いたA。


直後、ふるふるとその肩が小さく震え始めた。



「…桜――」

『…だ、大丈夫…』


震えた声で絞り出すようにもう一度その言葉を口にしたAは、



『じゃ、…ない』


と、続けた。




その目には涙がじわりと溜まり始めていた。

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作者名:white12 | 作成日時:2023年2月7日 18時

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