大丈夫なんかじゃない_7 ページ14
「桜庭…」
『大…丈夫、なんかじゃ…、な…い、です』
Aの肩の震えが大きくなり、
松田は思わずその肩に触れ、苦しげに彼女の横顔を見つめていて。
『大丈夫…なんか、じゃ、…なかった。私も…、優也も』
自身の膝を見つめながら、
ふるふると首を振り、唇を強く噛んだA。
そして、膝の上でギュッと手を握りしめ、大きく表情を歪めると、
彼女の目からハラリと涙がこぼれ落ちた。
「…お前、もしかして」
『優也…が、何をしよう…と、していたのか、…聞きました』
途切れ途切れに絞り出されるAの言葉に、
松田はハッと目蓋を動かした。
そして、
自身を落ち着かせるようにすぅっと一度呼吸をした後で、
Aは、ゆっくりと松田を見つめ、
『…優也を見つけてくれて、止めて…くれて、ありがとうございます。
本当に…ありがとう、ございます』
と、震える声で告げた。
『何も、…聞くつもりはなかったんです。
無事で、見つかっただけで...。
でも、優也が、…自分から話して、…くれました。
私には、…話せないことも、あるはず...なので、
今…は、精神科の先生が…、話を、…してくれていて』
「…」
『…犯人たちを、…同じ目に遭わせてやりたい…って、
殺して…やりたいって、そう思っているのは、一番…苦しいのは、…優也だったのに。
捜査を…妨害したかもしれない警察、…上層部のことも、
一番、憎んで…いたのは、…優也だったのに』
松田の顔を見ることなく、
嗚咽を溢すこともなくただハラハラと涙を流しながら
まるで独り言のように言葉を続けるA。
少し物騒な言葉が聞こえたからか、
人気の少ない待合室に座る2人に、看護師の1人がちらりと視線を向けた。
松田は、
悲痛な表情のAが膝の上で握る手の片方に自身の大きな手を重ね、それを包み込んだ。
彼もまた、やりきれない表情で、目を薄く赤く染めていた。
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作者名：white12
| 作成日時：2023年2月7日 18時
