サンタクロースに願うのは_12 ページ12
コンコンッ。
いくつかの足音に混じってノックの音が響き、
ベッドの上で上半身を起こしたまま、優也はゆらっと首を動かした。
「はい」
ベッドから降りようとはせず、控えめな返事だけをこぼした優也。
静かに開いたドアから入ってきたのは、随分と背の高い男たちで。
訝しげに眉を寄せながら、彼らの中に見たことのある人物を認め、
はっと小さく目を見開いた。
直後、視線を自らの膝の辺りに向けた優也。
見覚えのある男は、昨日、慌てた様子でこの病室に入ってきた男──、松田だった。
「「「…あ──」」」
「え…と、突然ごめんな。…俺たち、警察学校で桜庭さんと…同期、で」
降谷たちは病室に一歩入ったところで申し訳なさそうな顔を浮かべ、
景光が小さな声で優也に話しかけた。
揃って心配そうに見つめているのは、優也のベッドに突っ伏すようにして眠っているAだった。
「…、すみません。姉ちゃん、さっき寝ちゃって…」
起こさないようにと、ちらっとAに目を向けながら、
小声で答える優也。
「それと…あの、…昨日は、ありがとうございました」
そうして、松田を見つめて続けて礼を述べた。
松田は、「…いや」と軽く首を振り、
その視線を身体をゆっくり上下させて眠っているAの姿に向けていて。
「もしかして、姉ちゃんに用事…でしたか?」
「…用事というか、昨日のこともあるし、…心配だったからな。
桜庭さんのことだけじゃなくて、君のことも」
そう言ってベッドにすっと近づいたのは、降谷だった。
「警察からは一応聞いているんだが、…怪我は無かった…んだよな?」
「え、…あ、は…はい。
俺は大丈夫です…」
降谷に答えながら、優也は目を閉じているAの顔を心配そうに見つめた。
その頬には、赤い切り傷があって。
昨夜、その怪我を指摘した自分に、
“何でもないよ。大丈夫だから”
と軽く笑って、“優也が無事で良かった”、と何度も言っていて。
今も、布団の下で自分の患者衣を握ったまま寝てしまっているAに、
複雑そうに軽く目を細めた優也。
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作者名:white12 | 作成日時:2022年11月2日 20時