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吸い込まれそうな蒼_8 ページ33

向かったのは3階のフロア。
つい、先ほど彼女が姿を見せた場所。

雪村香奈の病室だ。


その奥では、


「雪村さん!雪村さん!聞こえますか!?」
「ショック開始します!離れてください!」


騒がしい声と、パタパタと病室へ走り込む看護師の姿。

ピーッと、何も刻まない電子音が響く中、
近づけはしないその病室で何があったのか。
それを降谷が推測するのは難しいことではなかった。



それなのに、
なぜ、真っ先に”ここ”に足が動いたのかを、
やはり降谷は理解出来なくて。

――思考の隅。
磨りガラスで覆われたような領域。


(…なん、なんだ)



何かに抗うように思考を巡らせる降谷の脳裏に、
いくつかの光景と声が浮かんだ。


病室から出てきた彼女の様子。
先ほど屋上で見た、ふわりと、空へ返すような仕草。
仕事は終わったところだと話していた彼女の声。

以前、米花町の担当だと言っていた彼女の話。

通り魔に襲われて、植物状態となっていた雪村香奈。


“理不尽”、“未練”
という言葉を伴う、魂を刈られる人物の条件。




ぼんやりと、
しかし、確かにその情報はあって。



もどかしい感覚に抗うように、


(彼女が――、刈った…?)


と、降谷は1つの推測を導き出した。



何らかの理由で息を引き取った雪村香奈の魂を。


そういうこと、なのだろうか。



“良く、分からなくて”


彼女の言葉通り、
それらの事実を知っていたはずなのに、
降谷にはやはりどうしてもうまく”結びつけられず”、
あの、磨りガラスのような奇妙な感覚を、再び感じていていた。




多くの魂を刈る作業と引き換えに与えられるらしい半日の時間と、彼女の願い。


でもそれは、もしかするともう――。


そこまで考えた思考は、またもストップして。


何故、そう思うのか。
何か根拠があるはずなのに、何かに遮られているようなその奇妙な感覚に、
降谷は強く唇を噛み、再び屋上に足を向けた。


再び階段を駆け上がる中で、
彼女があの病室に佇んでいた姿が浮かんだ気がして、
しかし覚えていたはずのそれは、
降谷の思考の中で、淡く溶けるように消えていった。

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white12(プロフ) - ra-raさん» 返事が遅くなって失礼いたしました。嬉しいコメントを頂きましてありがとうございます。更新が不定期で申し訳ありませんが,引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです。 (2021年9月24日 21時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra-ra - こんにちは!この先どのような物語になっていくのかワクワクした気持ちで読んでます。のんびりと更新待ってます! (2021年9月19日 17時) (レス) id: f4447b9ee9 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:white12 | 作成日時:2021年9月19日 8時

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