オレンジに染まる曇り空 ページ10
次の日の朝。
堤無頭川近くでは、自身のトレーニングを兼ねながらハロを追いかける降谷の姿があった。
いつぞやのように、6時という早い時間だ。
ポアロの店員を辞め、
潜入捜査は完全に終えたわけだが、時間に余裕が出来るはずもなく。
数日後に異動を控え、むしろ一層慌ただしい日々だ。
今日も徹夜明けで一旦自宅に帰ったところという訳だ。
「あまり遠くへ行くなよ、ハロ!」
「…アン!アン!!」
――――
一方。
河原に降りるゆるい斜面に腰を下ろしていたAは、
少し遠くから聞こえる小高い声に、ゆっくりその方向に振り向いた。
『…あ』
目に入ったのは、見たことのある子犬。
それはつまりある人物が近くにいることを意味することを瞬時に理解し、
Aは少し戸惑う様子を見せた。
「アン!!」
『…え?』
Aの姿を見つけたからか、
鳴き声とともに何故か近寄ってきたハロに”お、おはよう。ハロ”、と戸惑いつつ挨拶をするA。
「…あ。相原さん」
『おはよう、ございます』
直後、走って現れた安室。
芝生に座ったAにハロがトコトコと近づいている様子に、
少し驚いた様子を見せている。
いつぞやは、
人見知りゆえに敬遠する様子を見せていたのだから当然だ。
『今日もお散歩ですか?』
「えぇ。相原さんは、…朝日を見に?」
『はい。あの、…怪我の具合はどうですか?』
安室のこめかみには、小さめではあるもののまだガーゼが貼られている。
申し訳なさそうにAが問うと、
“軽い怪我でしたから大丈夫ですよ”と、安室がニコリと笑った。
血を流した彼の様子を目の当たりにしていたのだ。
軽いという訳じゃないことくらい、Aは分かっているのだが。
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white12(プロフ) - なーこさん» 少々複雑な話になった気もしています。降谷が絡むとどうもそういう話になるようで...(苦笑)。本作も、最後までお読みいただき本当にありがとうございました。 (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 互いに全く違うような感じですが、実はかなり近しいところもあるというか、本質的な部分を描きたかった本作でした。ちょっと切ないと言うか本質的に互いが抱える葛藤をさらに抉るような部分もありつつ、理解しあっていく(おもに降谷が、ですが)という... (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 今更ながらの返信ですみません...。いつもコメントありがとうございます!2人の微妙な関係と、なぜかお互いに心地よさを感じるという矛盾のような必然性のようなそういったところが伝わっていてとても嬉しく思います。 (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*普段時間の針が穏やかに進んでゆっくりなのに突然リズム乱して刻みだし早さ一定してない相原さんと普段寸刻を争い生きている降谷さん。2人一緒だと時空が歪みそうなのに何故か心地良くて...撒き塩での出会いが懐かしくしんみりします*。 (2020年7月6日 4時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - りんさん» お目汚しになった箇所も多いと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。また、他の作品でもお会いできましたら幸いです。 (2020年7月5日 0時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2020年6月17日 21時