Words (4)【名探偵コナン】

Words_3 ページ47

やんわりと。
触れる程度に、掴まれた手をぼんやりと見つめるA。



そして、"あ..."という鈴宮の声とともに、
その手はすぐに離れていった。



「...すみません。
そんなに喜んでもらえて、すごく嬉しいんですけど。
でも、…お祝いを貰うのは何だか申し訳ないっていうか――」

『何言ってるのよ。こういう時はめいっぱい喜ぶものよ？
何でそんな微妙な顔してるのよ』


不満げな顔になったAに、
鈴宮は、何やら迷っているような様子で笑みを浮かべている。


『今日内定を貰えたなんて、わざわざ報告に来てくれて...。
私なんか、自分が内定貰ったみたいな気分よ？』


満面の笑みで冗談めいたことを言うと、
ふと鈴宮が真剣な目をしたので、Aは小さく首を傾げた。


「あの…、相原さん――」

『あ、もしかして、
前に言ってた”いつもの名言”っての、…待ってるってこと？』


冗談めいた表情のままで、
ニンマリ笑ったA。


“ほら、いつもの…名言っていうか”


1次面接に受かったと、言いに来てくれた時。
鈴宮はそんなことを言っていた。

彼がバイトとして働いてくれていた間、
店でこうした話をしていた時は、
小難しいだのなんだのと良くからかわれていた訳だが。

就活という精神的に大変な時期ということもあったはず。
そしてあの日、
彼が吐露した悩みも、去り際に言った言葉も、
Aはちゃんと覚えていた。



『…ふふ。実は、ちょっと考えたのよ？
結果だとかそういうことじゃなくて、…鈴宮くんに伝えたいなと思う言葉』

「え…、本当ですか？」


実は――、
言いたいことはそういうことではなかったはずの鈴宮。

しかし、以前自分が話したことをAは覚えてくれていたのだと、
自分のことを考えてくれていたのだと、
じわりと嬉しそうに口元に弧を描いた。



『目を星に向け、足を地につけよ。』

「…」


静かに、告げられたその言葉。

およそ分かっていたとはいえ、
鈴宮は、やはりすぐには理解できず、嬉しそうに弧を描いていた口元は、
ほんの少し微妙に歪められた。

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