オレンジに染まる曇り空_3 ページ12
『どうか、しましたか?』
適当な話をしていたが、
わずかに息を吸い込むと、ふっと真剣な目で口を開く安室。
「相原さん」
『え?』
「ご両親のこと、――――知っているんじゃないですか?」
『………え?』
戸惑いまばたきを繰り返すA。
以前、何故か両親のことを問われ気にはなっていたものの、
再び今それを問われるとは思っても見なかったのだ。
安室の膝にいたハロは、
いつの間にか川沿いに下りてクルクルと走り回っていた。
『両親は…、私が1歳の時に亡くなりました。
何も、覚えていませんし、知らないとお話したと思いますけど』
「27年前の、…事故」
『…』
「東都ビル建設現場でのあの事故のことを、
何か、知っているんじゃないですか?」
読めない表情で問いかけてくる安室に、
Aは困ったように眉を寄せた。
『どうしてそんなことを聞くんですか?
お仕事か何かで調べているのなら、他の人に聞いた方が――』
「先日の、事故ですよ。
いや、あれは…事件だと、僕は考えていますけどね」
『…』
ちらりと安室のこめかみに視線を移し、
もう一度申し訳なさそうな顔をしたA。
そして、あの日のことを思い出したのか不安そうに表情を歪めた。
「あの日の貴方は、…真っ青でした。
目の前であんなことが起これば、怯えるのは当たり前です。
でも、それだけじゃないように感じたんですよね。
まるで、なにかを、…思い出してるような」
『…』
唇をキュッと閉じて、安室から視線を外したA。
安室――、降谷は、
自分がそれを問うている理由を、
何かに言い訳するように、チラリと川沿いではしゃぐハロに視線を落とした。
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white12(プロフ) - なーこさん» 少々複雑な話になった気もしています。降谷が絡むとどうもそういう話になるようで...(苦笑)。本作も、最後までお読みいただき本当にありがとうございました。 (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 互いに全く違うような感じですが、実はかなり近しいところもあるというか、本質的な部分を描きたかった本作でした。ちょっと切ないと言うか本質的に互いが抱える葛藤をさらに抉るような部分もありつつ、理解しあっていく(おもに降谷が、ですが)という... (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - なーこさん» 今更ながらの返信ですみません...。いつもコメントありがとうございます!2人の微妙な関係と、なぜかお互いに心地よさを感じるという矛盾のような必然性のようなそういったところが伝わっていてとても嬉しく思います。 (2020年7月15日 15時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
なーこ(プロフ) - 完結おめでとうございます´`*普段時間の針が穏やかに進んでゆっくりなのに突然リズム乱して刻みだし早さ一定してない相原さんと普段寸刻を争い生きている降谷さん。2人一緒だと時空が歪みそうなのに何故か心地良くて...撒き塩での出会いが懐かしくしんみりします*。 (2020年7月6日 4時) (レス) id: e08e419bfb (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - りんさん» お目汚しになった箇所も多いと思いますが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。また、他の作品でもお会いできましたら幸いです。 (2020年7月5日 0時) (レス) id: 8691b63699 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2020年6月17日 21時