Words (2)【名探偵コナン】

とてつもない違和感_5 ページ5

それからしばらくして。

お茶を飲み終えた安室を見送るため裏口を開けると、
もう外は薄暗くなりかけていた。


『あ、もう陽が沈んじゃいますね。長居させてしまいました…
気をつけて帰ってくださいね』


「いえいえ。ごちそうさまでした。
ようかん、美味しかったです。
ありがとうございました」

『こちらこそありがとうございました。
こうして手伝ってくださったり、
先日も脚立から落ちそうになったところを助けてくださったり。
安室さんには感謝しています。』

「大したことじゃないですよ。
お茶や、栗ようかんまで頂いて、
僕の方が得をさせて貰っているくらいです。
それと――」

『え？』

「もしかして、足、怪我していませんか？｣



とっさに、自分の右足のふくらはぎあたりに視線を落としたA。
ジーンズで見えないはずのそこに貼った大きめの絆創膏がバレたのかと、焦った様子で。


「やっぱり…」

『え、あの…』


とっさに移した視線は、そこを怪我しているという返事にも取れるわけで。
人の言葉や態度から様々なことを察するのは、安室なら、降谷なら簡単なことだ。


『えっと…、何で分かったんですか？』

「歩いたり、座布団から立ち上がるときに、
少し痛そうにしていたので。」


酷い痛みじゃない。
それでも、些細な表情の変化を見られていたということか。それとも、分かりやすいということか。

Aはバツが悪そうに、
ハハッと小さく笑った。


『少し前に、自転車で転んでしまって。
…と言っても、軽い擦り傷ですけど』

「事故に遭った…ってこと、ですか？」

『あ、違います。ちょっとボンヤリしていただけで』


訝しげに少し距離を詰めようとしてきた安室に、すかさずニッコリと否定の言葉を返すA。


「そう、ですか。…気をつけて下さいね？
本当に手伝いが必要なときはいつでも知らせて下さい｣

『はい。
ありがとうございます。
お店、まだしばらく改修には入らないと思うので、またいらしてくださいね』


「はい。…それじゃ、また」



会釈をしながら路地の方へと消えていく彼にニコリと微笑むと、
Aは店へと戻っていったのだった。

擦り傷と、打ち身になってしまっていた右足に、鈍い傷みを感じながら。

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