Liar (3)【名探偵コナン】

安堵とため息_2 ページ5

(…営業になった頃に比べれば、ね。
それに北川さんと顔を合わせずに済むなら、
気が楽だわ。)


こんなこと、何でもないことだと言い聞かせるように、
自嘲気味に口角を上げた。
しかしすぐさま溢れたのは大きなため息だ。


クリエイター専属だったAが、
営業に異動になり、デザインも担当しながら営業の仕事を必死で進め始めた2年前。
ただ、受注された案件をこなしていくだけではなく、
自分の力で仕事を獲得し、そして、自分で作ったデザインを、売ってみたい。
最初はそう、考えてがむしゃらに営業の仕事を覚えた。

そして、業績が上がっていくにつれ、
“女だから”
“女のくせに”
“女は良いよな”

と、女であることを蔑むような、
そして、まるで女であることを武器にでもしているような、そんな言葉や視線を向けられるようになった。

今、営業担当の女性社員はAのみだ。
Aが異動になる前、
営業には1人の女性社員がいたのだが、
Aと入れ替わるようにして、退社したのだ。

今となっては、勝手ながらその気持ちも分かる気もした。





「…さん？月島さん？」

『え？』

そして、デスクに戻った自身の顔を覗き込むようにして、
声をかけてきた湯川に、ピクリと肩を震わせた。

「あ、なんか考え事してるみたいだったので。
大丈夫ですか？」

『…えぇ。ごめんなさい。どうかした？』

「あ、メールでもご相談してたんですけど、
昨年Aさんが担当した、D社の案件で納品したデザインのことで――」


湯川と仕事の話を始めたAは、
普段の、”営業課長”の顔に戻ってはいたが、
どこか、少し様子がおかしいことに、湯川は気づかなかった。

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