バレンタイン_2 ページ5
2日後の日曜日。
今日は2/14。バレンタイン当日だ。
社内の人間には、義理チョコを金曜日に渡し終えた。
康太と別れた今、他に渡す人間のいないAは、
自宅でノートPCに向かい合っていた。
『…うん。これでほとんど大丈夫…かな』
昨日、湯川と石田から送られてきたファイルを合わせ、
修正デザインを確認するA。
A社の案件だ。
ほぼ完成した修正案に口元を緩めるAは、
ぐっと伸びをすると、
残っていたカフェオレを飲み干した。
ちらりと壁の時計を見ると、もう14時を回っている。
そして、ふと何かを思いついたようにクローゼットを開けコートを羽織ると、
そのまま部屋を出て行った。
30分ほどして、
Aが足を踏み入れたのは杯戸町のCafé Rain。
「いらっしゃいませ!お好きな席へどうぞ」
足を運ぶのは3度めだが、
すっかり覚えてしまった元気な女性店員の声にニコリと笑みを返した。
彼女は確か、”由紀”という女性だと思い出すA。
今日は日曜日ということもあるのだろうか。
賑わっている店内ではカウンターしか空いておらず、
奥の席に腰を下ろしたA。
ニコリと笑みを向けてくる彼女は、
この店の店主だということを、先日、SNSで知った。
自身のアカウントを作っているSNSだ。
この店のページもあるサイトで、
足を運ぶようになってから、時折情報を確認しているのだ。
店の情報については詳しく調べたことは無かったのだが、
そのページで、今、カウンターの中にいる女性がマスターだということを知ったのだ。
「ご注文はお決まりですか?」
『これ、お願いできますか?それと、ブレンドコーヒーを。』
「かしこまりました!少々お待ちください!… 菜々さん、えっと――」
注文を取りに来た由紀に、
壁に貼られているメニューを注文したA。
それは、バレンタイン期間限定のメニューだった。
ハート形の可愛らしいスコーンの写真が載ったそのメニューが、
今日の目的なのだ。
2/7-14の1週間限定メニュー。
その情報をつい昨日SNSで知ったAは、
今日までしか食べられないそのスコーンに、興味があったのだ。
可愛らしいものに関心が湧くのは、
やはり女性の性 (さが)だろうか。
北川の件も、
少なくとも依頼案件については、無事収束しそうな状況で、
日曜日の息抜きとして、こうして足を運んだのだった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年12月5日 19時