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気のせい_2 ページ33

「あれ。ここにも来るの?」

『…え…』

ぐるぐると思考を巡らせ、
カクテルに口をつけていたAは、
入口側から近づいてきた人物に声をかけられ、
ゆっくり振り向いた。


「…よく会うね?」

『…』


何故こう度々会うのかと、
Aはあからさまに不機嫌な表情を浮かべると、
男が口にした言葉の意図が掴めず、口を開かないまま顔を背けた。


「バーボンを」

『…何でまたそこに座るのよ』



先日のように、
自身の隣に腰掛けた男に、
Aはポツリと文句を零した。


「…もしかして、珍しいとこ見ちゃった?俺。」

『は…?』


何やら軽口を叩いてくる、
やはり軽そうな男に、Aは全力で不快そうな顔を向けた。



「泣いてるみたいだから」

『…っ…!』


先ほどまで浮かべていた、
ナンパそうな笑みを消し、
真剣な目でそう口にした萩原に、Aは驚いたような不快そうな、
複雑な表情を浮かべた。


そして、ジワリと緩んでいた涙腺に今更気づいたように、
再び、パッと顔を背けた。


『…気のせいでしょ。
ライトでも反射してたんじゃないの』

「…」

カウンター上にいくつか取り付けられている、
インテリアライト。
キラキラと光るそれに錯覚したんじゃないかと、いうことか。
“気のせいだ”と口にしたAに、萩原は口を閉ざした。



15分ほどが経ち、
何故か、萩原と隣り合って座っている形になっていたAだが、
特に何も話すことなく、ただ、目の前のエメラルド・ミストに口をつけていた。

今日は、Aにしてはペースがゆっくりなようだ。
印象の悪い男が隣にいるにも関わらず、
チビリチビリと、その味を楽しむようにして。

特に会話を交わすことのない、
泣いているのではないのかという言葉に、Aが ”気のせいだ”と一蹴した後、
それ以上口を開こうとしない萩原は、
席を移動しようともせず、やはりバーボンを静かにと口にしていた。


(…こうも度々会うと、
まるでストーカーでもされてるんじゃないかって思っちゃうわね)

不快感全開のセリフを心に浮かべるAだが、
今の状況で北川に会うよりはマシか。
などと考えていた。

そして、これからどうしようか。
どうするべきか。
A社との取引。
北川への対応。
社内での振る舞い。

様々なことが頭に浮かび、
ゆっくり口をつけていたはずのグラスを大きく傾け、
残りをグイッと飲み干したAは、萩原に視線を向けることなく、
代金を支払うとそのまま店を出て行った。

ストーカー→←気のせい



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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時

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