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気のせい ページ32

『はぁ…』

静かに息を漏らすAの手元には、
淡いブルーのカクテル。

初めて足を踏み入れた店だ。
さすがに、あの店、米花町のBar Curiousに足を運ぶ気にはなれなかった。


もし、また顔を合わせたら、
引っ叩いてしまいそうだったから。


“A社の北川さんから、
君から随分失礼な態度を取られたと、クレームがあった”

“正式な話はまだだったが、
大きな依頼の話があったんだが、残念ながら白紙になったようだ。”

今朝、ギロリと責められるように告げられた、
部長からの言葉。


(…あの男。)


悔しさでジワリと涙が浮かびそうになる。
一度、吹っ切れたように本心を認めてしまったら、
貼り付けてきた笑顔は何の役にも立たなかった。

こうなるのが嫌で、
色々なことを回避するように、
人当たり良く、笑みを絶やさず振舞ってきたのに。
営業になって、
それも大事なスキルだと信じて、言い聞かせてきたA。
実際、そう振る舞うことで、
スムーズに取引を成功させ、実績を残してきたのも事実だ。


『…同じもの、貰えますか?』


少し乱暴に、空になったグラスをカウンターに置くと、
Aは、同じカクテル、
エメラルド・ミストを注文した。




Bar Curiousより、少し大きめの店。
3日後はクリスマスだ。
店内はやはりキラキラと装飾が施されていた。

テーブル席には、大学生だろうか。
若者たちが3-4人集まっている。


部長から、対応には十分注意しろと責められ、
しぶしぶ謝罪のメールをしたものの、
直接謝罪に行くつもりなど毛頭ない。
むしろ、担当を外された方が良かった。

先日、一蹴されたとはいえ、
もう一度、事実を伝えたにも関わらず、
担当を外してもらえないかと訴えたにも関わらず、
それは認められなかった。

大事な取引先だと。
自身は他の多くの案件を抱えており、
今、営業の中で担当できる力のある人間はいないと。
取引関係を終わらせる気かと。

課長として、部下を纏める身だ。
身勝手に投げ出す訳にはいかない。
部下に、多くの苦労を強いる訳には、いかないのだ。



(…あぁいうことをして来なくなったとしても…、
良い関係を築けるとは、思えないのに…)


仮に、触ってくるようなことがなくなったとしても、
断りの言葉を告げたAに、
何を言ってくるか分からない。
理不尽な案件を押し付けられるかもしれない。


嫌な考えばかり浮かぶ思考に、

すっと差し出されたグラスに光るブルーが染み渡るようだった。
またも、ジワリ、と涙腺が緩みかけ、
振り切るようにグラスに口をつけるA。

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設定タグ:名探偵コナン , 萩原研二 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月29日 22時

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