長い1日_9 ページ26
「…おい。トイレくらい行かせてくれ…!」
「…わ、私も…」
そして、子どもの泣き声を合図にしたかのように、
拘束された客、数人がソワソワし始めた。
「…うるせぇ!」
そして、大柄の男もまた銃を向けて近づいてくる。
(…最初に発砲した男ね…)
『…でも、20時までこのまま座らせておくつもり…?
トイレくらい良いでしょ…?』
便乗するかのように口を開き、
Aは、犯人たちを見据えてすっと立ち上がった。
口を開いた他の人質を守るかのように。
Aを含め、他の人質は全て両手を拘束されてはいるが、足はそのままだ。
「…チッ。…連れて行け。」
リーダーの男の指示を受け、
声を上げた人質の中年男性と、子どもを連れた女性が、
応接室とは別方向の、店の奥のトイレへと連れて行かれた。
犯人たちに背中に銃を突きつけられるようにして。
「…下手な真似してみろ。
店ごと吹っ飛ばすぞ?」
そして、立ち上がったまま、男女が連れて行かれた店の奥へ視線を見けるAに、
リーダーの男がギロリと視線を向けた。
「…まずは、店の奥から吹き飛ばしてもいいんだぜ?
あの人質ども、諸共な…」
そう言いながらポケットから取り出したのは、
1台のスマホ。
(…あのデバイスから起爆する仕組みってこと…)
『…悪いけど、私も行かせて貰いたいんだけど。…トイレ。』
――パンッ…!
男から少し視線を逸らしつつ、
トイレの方向に目を向け、Aが口を開いた瞬間、
視線の先の方から、乾いた発砲音が聞こえてきた。
『…!』
そして、そこから犯人の大柄な男に掴まれるようにして歩いてきたのは、
頬から血を流した、中年の男性。
先ほど、トイレに向かった男性だ。
「…変な真似するんじゃねぇ。次は殺すぞ」
吐き捨てるような言葉とともに、
乱暴に床に叩きつけられた中年男性は、
銃をつきつけられ、一旦解かれていたものの再び後ろ手に拘束された。
犯人に掴みかかろうとでもしたのだろうか。
男性の頬から、赤い血が流れているもののその量はわずか。
どうやら、かすり傷のようだ。
しかしAは唇を噛み、険しい表情を浮かべ、
銃を持った大柄な男を見据えていた。
(…あの銃は、やっぱり本物…。
あの男の銃、何とかしないと…)
そして、しばらくして、子どもと共に帰ってきた女性客と入れ替わるように、
店の奥へと足を進めた。
女の犯人に、銃をつきつけられる形で。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月17日 12時