Rain (2)【名探偵コナン】 (ページ10)

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喫茶店ポアロ_4 ページ10

『来週の23日から出す予定なんですけど、もう少し手を加えようかなと思っていて。
…なので、内緒にしていてくださいね？』

Aは、困ったように眉を下げ、
お願いしますというように小さく首を傾げ、
そして――ニコリと笑った。

こういった笑顔や仕草が困った男たちを惹きつけてしまうのだろうか。
当然本人は無意識だろうが。

そして、”もちろんですよ”と爽やかな笑顔で答える目の前の男、安室。
その人気は無意識の性格からか、あるいは意図的な何かなのか。

『2,3日中にSNSでお知らせするつもりなので、
安室さんも宜しければいらしてくださいね。』

そして、
営業スマイルに戻ったAの宣伝のような言葉に、
“えぇ。ぜひ。”と、社交辞令のような返事をすると、
安室はキッチンへと戻っていった。

安室がいなくなり、
早速ハムサンドにかじりつくA。

『…美味しい…』

由紀の言う通りだ。
何とも言えない、この味。
懐かしいような、落ち着くような。
(…隠し味…、何だろう…)

そして、ブレンドコーヒーに口をつけると小さく目を細めるA。

『わぁ…確かに美味しい。
ちょっと浅煎り…だけど、濃さが絶妙…』

やはり他の店のコーヒーは、色々と勉強になる。
もちろん、豆や淹れ方など、実際のところはどうなのか、
自身も店をやっている身としては、
ズカズカと聞けない訳だが。

(もしかして…)

自意識過剰、だろうが、
先日安室がCafé Rainに来たのは、
今のAと同じ目的だったのだろうか。

勉強を兼ねた他の店の偵察。
自身の店との比較。

“偵察”などと言っても悪い意味ではなく、
学ぶことは多いわけで。

実際、“絶品”だと言われているハムサンドの味。
何とも言えない美味しさのブレンドコーヒー。
どちらも、気分が落ち着く美味しさ、と言う表現がぴったりなメニューに、
舌鼓をうつAだった。