検索窓
今日:13 hit、昨日:35 hit、合計:382,636 hit

クリスマス_2 ページ28

もう20時を回ろうとしている。
店の掃除や清算を終え、
昨日同様、念の為周囲を警戒しながら店を出るA。
店内のクリスマスツリーや装飾の片付けなどもあり、
いつも以上に閉店作業に時間がかかったのだ。


昼間、店に来ていた萩原は、
特に何も言わず、
いつものようにコーヒーを1杯飲み終えると代金を支払って帰っていった。
会計の際に向けられた笑みは、あの、色気のあるさらりとした笑みではなく、
どことなく心配そうな表情に見えたのは、気のせいだと思うようにした。

“もうちっと警戒しろよ…”

松田に言われた言葉を思い出すA。
待ち伏せをされたのは、つい2日前のこと。
松田に言われなくとも、
反射的に、全力で警戒するのは自然なことだ。
といっても、どれだけ警戒しようが、
男に迫られればそう簡単に逃げられないことも、理解はしている。
それでも――


Aは、寒さで硬くした身を一層強張らせ、
周囲を警戒しながら自宅方面へと歩き出した。


『…あ。』

数歩歩いたところで、カバンの中にスマホが無いことに気づくA。

『置いてきちゃった…』

小さなため息とともに、
店に戻り、奥のデスクに置いたままのスマホを手にした。

そしてそのまま店を出ようとして、ふと、立ち止まるA。

スマホの消灯したディスプレイと、
店の入り口を交互に見つめ、少しだけ、切なそうな目をした。

閉店後に来ないでといったのはA。
男とはもう関わり合いたく無いといったのもA。
それは、松田とはもう関わり合いたく無いから来ないでくれ、
というセリフと同義とも言える。



『…』

Aは苦しげな表情で、
スマホのディスプレイに、ある電話番号を呼び出した。
松田の、番号だ。

そして、削除ボタンを押そうとした時――


チリン…


入り口のドアが開いた。

クリスマス_3→←クリスマス



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (164 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
259人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。