クリスマス_2 ページ28
もう20時を回ろうとしている。
店の掃除や清算を終え、
昨日同様、念の為周囲を警戒しながら店を出るA。
店内のクリスマスツリーや装飾の片付けなどもあり、
いつも以上に閉店作業に時間がかかったのだ。
昼間、店に来ていた萩原は、
特に何も言わず、
いつものようにコーヒーを1杯飲み終えると代金を支払って帰っていった。
会計の際に向けられた笑みは、あの、色気のあるさらりとした笑みではなく、
どことなく心配そうな表情に見えたのは、気のせいだと思うようにした。
“もうちっと警戒しろよ…”
松田に言われた言葉を思い出すA。
待ち伏せをされたのは、つい2日前のこと。
松田に言われなくとも、
反射的に、全力で警戒するのは自然なことだ。
といっても、どれだけ警戒しようが、
男に迫られればそう簡単に逃げられないことも、理解はしている。
それでも――
Aは、寒さで硬くした身を一層強張らせ、
周囲を警戒しながら自宅方面へと歩き出した。
『…あ。』
数歩歩いたところで、カバンの中にスマホが無いことに気づくA。
『置いてきちゃった…』
小さなため息とともに、
店に戻り、奥のデスクに置いたままのスマホを手にした。
そしてそのまま店を出ようとして、ふと、立ち止まるA。
スマホの消灯したディスプレイと、
店の入り口を交互に見つめ、少しだけ、切なそうな目をした。
閉店後に来ないでといったのはA。
男とはもう関わり合いたく無いといったのもA。
それは、松田とはもう関わり合いたく無いから来ないでくれ、
というセリフと同義とも言える。
『…』
Aは苦しげな表情で、
スマホのディスプレイに、ある電話番号を呼び出した。
松田の、番号だ。
そして、削除ボタンを押そうとした時――
チリン…
入り口のドアが開いた。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月14日 21時