Rain【名探偵コナン】 (ページ42)

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付き合ってる人_3 ページ42

『…同じ大学の同期で。
自信家なところはあったんですが、
それでもその分頑張っていて、素敵な人だなと思っていたんです。』

「…」

『でも、社会人になって…、東都を離れた彼と遠距離になってから、
何だか彼は変わってしまって。…結局別れることになって、

…それでも、カフェを始めたいっていう、その夢だけは変わらなかったので。』

「…そうか。
まぁ…、自分がやりてぇことと色恋とは別モン、だからな。」

彼なりのフォローなのか、
松田の言葉に、
Aが自嘲気味に、泣きそうに笑うと、
松田もまた小さく口角を上げた。

侑斗に対しての言葉は一言も無かったが、
それでも、社交辞令的なものではない、
静かな松田の言葉は、今のAにとってはありがたいものだった。
下手に優しくされれば、泣いてしまいそうだったから。

――――――

『…今日はすみませんでした。また、いらしてくださいね。』

コーヒーを飲み終えた松田を見送るAは、
もうすっかり普段の営業スマイルを浮かべている。

「鍵、かけといた方が良いんじゃねぇか？」

『え？』

「店、閉めた後。
さっきの男がまた来るかもしれねぇだろ。」

『…そうですね。
でも…、
じゃあ、松田さんは営業時間内に来てくれるんですか？』

表情を窺うようにして、Aは松田をじっと見つめた。
毎日現れる、”時間外の常連客”を無下には出来ないのだ。
それにA自身、いつの間にか毎日の楽しみのようにもなっていた訳で。

「…まぁ、前にもそうしろって言われたしな。」

『ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ。』

「…え？」

『また、侑斗が…、あの人が来ても、追い返すだけですから。
防犯上、鍵は掛けておいた方が良いのかもしれませんけど。

だから、松田さんの都合の良い時にいつでもいらして下さい。
お仕事大変だと思うので、
無理して来るなんてことは…絶対しないで下さいね。』

そんなセリフを吐きながら平然としているAだが、
あの男が帰った直後、声を震わせ、
カウンター内で涙ぐんでいたのは、見間違いではないだろう。

松田は複雑そうに目を細めると、何も言わずに店を出ていった。