別モンだからな。 ページ43
( …まさかここに、侑斗が来るなんて。)
彼と付き合っていた頃に住んでいたマンションを引っ越し、
もう会わないと思っていた。
オープンして1年経って現れた侑斗。
どこかでこの店の噂でも聞いたのだろうか。
それに、
別れた時、侑斗は東都に本社をおく証券会社の支社で働いており、
東都を出ていたはずだ。
本社勤務になったのか、あるいは転職か何かで東都に戻ってきたと言うことか。
『…何なのよ…』
店に残ったAは、松田に言われたとおりきっちりと鍵を閉め、
キッチンの片付けを再開しようとした手を止めた。
そして店の奥へと足を踏み入れ、
手にしたのは、1冊のノート。
スコーンのレシピやデザインを書いていたスケッチブックとは違う、少し大きめのものだ。
開いたページには、
木目調の素材で揃えられたテーブルや椅子、カウンター、壁など、
落ち着いた空間が描かれていた。
店の、内観デザインだ。
それは、このCafé Rainにとても良く似たものだった。
そのデザインは、同じ夢を持っていたときに2人で話しながら描いたもの。
侑斗と意見を交わしながら、絵が得意なAが描いた理想の空間。
案としてはいくつかあったのだが、
Aはこのデザインが一番気に入っていた。
“この店、あの時俺と話し合ってデザインした店だろ?
あの時描いた内観のまんまじゃん。”
侑斗はそう口にした。
もう随分前の話なのに、覚えていたとでも言うのか。
遠距離になって、
社内の人間と浮気したのはどこのどいつだ。
(…さっきの口ぶりじゃ、別れた後、
瑠美とかいうあの人と付き合い続けてたってこと…でしょ。)
付き合った当初はあんな人じゃなかった。
好きだったのは、嘘じゃない。
“あれだけ、俺のこと好きだったもんな?“
先ほどの侑斗の言葉を思い出し、
Aは悔しさと強い苛立ちを感じた。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時