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晴れた疑惑 ページ19

それから5日が過ぎた。
Aは、自宅のキッチンでボールをかき混ぜていた手を止め、
耳をすませていた。

部屋で流しているラジオから、

“2週間前の夜、杯戸町で起きた殺人未遂事件の犯人が逮捕された”

と報じられていたのだ。

(…そっか…捕まったんだ。)

Aは、すとんと肩の力が抜けるような感覚を覚え、
慌ててボールを支え直すと、
どこか心ここに在らずといった具合で、再びボールをかき混ぜ始めた。



14時。
部屋には、午後の日差しが降り注いでいた。

(…掃除、したばかりなのになぁ。)

陽の光は心地よいものだが、
部屋の埃が目立ってどうしても気になってしまう。

でも、それ以上に気になり続けていたあの事件が解決したことで、
Aは久しぶりに胸の底から大きく息を吐いた。


『…あ、ちょっと練り過ぎたかも…』


ボールの生地をしばらく見つめた後、
“まぁ、大丈夫かな。”と首を傾げたAは、
チョコチップや冷凍イチゴなどを加え、再びさっくりかき混ぜ始めた。





1時間ほどして、
キッチンでオーブンの中を覗いていたAは、
インターフォンの音で玄関へと向かった。

チラリと見たモニターには、見知った顔が映っていた。

『…はい。』

玄関のドアを開けると、そこには松田の姿。
今日はサングラスを外しているようだ。

『…まだ何か?』

「あぁ。例の事件だが…」

言葉を交わしながら、やはり玄関の中へと松田を促すA。
部屋の中からは、スコーンの甘い香りが漂って来ていた。

「今朝、犯人が捕まった。」

『そうみたいですね。先ほど、ラジオで聴きました。』

「詳しいことはこれから取り調べる段階だが、
別の女とも付き合ってたみてぇでな、その女が…、今朝自首して来た。」

『…そうですか。』

先日とは違い、玄関先で会話を交わす2人。
先日Aが口にした通り、やはり桜田にはAの他に不倫相手がいたのだ。

「桜田も昨日退院したそうだ。」

『良かった、です。』

もう関わり合いたく無い、
それほど好きじゃなかったのかもしれない、というのは本心だが、
情がないわけじゃ無い。
刺されたと聞いて心配したのも本心だ。
Aは安堵したように、少しだけ口角を上げた。


そして、松田は気になっていたことを口にした。

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設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平 , 警察学校組   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時

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