晴れた疑惑_2 ページ20
「店、休んでるみてぇだが」
『…ちょっと、事情がありまして。』
一昨日、別の事件の捜査で松田がCafé Rainの近くを通った時、
少し遠目に見て、店は閉まっているようだった。
そして今日、犯人が捕まったことの報告を含め、
Aに会いに店に行ったところ、やはり店は閉められており、
ドアには整った自筆の文字の張り紙がしてあった。
“誠に勝手ながら、都合によりしばらくお休みさせて頂きます
Café Rain”
『でも、明日から開ける予定ですから。』
「…そうか。」
明日から開ける、というAの話に、
松田は特に深く気にすることもなく、短く返事をした。
『良かったら、召し上がっていきますか?
ちょうど焼きあがるところなので。』
「…は?」
『明日から出そうと思っている新作なんですけど。
うちの店、スコーンが結構人気なんですよ。』
といっても、もうここ数日は店を閉めているのだが。
Aはまた自嘲めいた笑みを浮かべ、
良かったらどうぞ?と、松田を部屋へ促す仕草をした。
「…悪りぃが、まだ捜査中なんだ。」
『…そうですよね。すみません。』
何やら客を相手にしているように、
営業スマイルを浮かべつつあったAだが、
小さく頭を下げ、微笑んだ。
油断すると沸き上がりそうな怒りを抑えるように。
松田が帰った後、
オーブンから取り出したスコーンを一口かじるA。
少し失敗したかと思っていたが、
かなり美味しく焼きあがったそれに、どこか泣きそうな表情で、ふわりと笑ったのである。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時