休日の訪問客 ページ16
翌日の土曜日。今日は店は定休日だ。
『…あ。』
「悪ぃな。待たせて貰った。」
Aは困った表情で瞬きを繰り返した。
買い物から帰宅すると、家のドアの前に松田刑事の姿があったのだから。
サングラスをかけた姿は、やはり威圧感があり、
買い物袋を下げたままのAは少しだけ身構えた。
『まだ何か?もうお話できることは何も…』
「ちょっと、な。」
『…どうぞ。』
Aは鍵を開け、部屋の中へ入るよう松田を促した。
「いや、ここで良いんだが――」
『どうぞ』
“良いから入って下さい”と言うように、 語気を強めるAに、
松田は静かに玄関に足を踏み入れた。
廊下などで会話をしようものなら、誰に聞かれるか分からないのだ。
刑事が何度も家を訪ねて来る、なんて、ポジティブな印象を持たれるはずがないのだから。
『狭いですけど』
スタスタと部屋の中へ入っていくAに戸惑いながらも、
松田は追いかけるようにして部屋に足を踏み入れた。
中は1DKのシンプルな部屋。
ローテーブルに、ベッド、TV、チェスト。白とベージュ、茶色を基調にした女性らしい空間だ。
キッチンは、カウンター式になっている。
『コーヒーで良いですか?』
「いや、良い。話を聞きてぇだけだ。」
『…何の話ですか?』
Aは、松田とは目を合わせず、
買い物袋を手にキッチンへ入って行った。
「桜田…、アイツとはどのくらいの頻度で会ってた?」
『…それは、捜査に関係あることですか?』
「あぁ。あの男の交友関係を調べてる。あの男の嫁に聞いても、いまいち情報が…な。」
どうやら、桜田の奥さんは鈍いのか放置気味なのか、
Aの存在、桜田の女性関係には気づいていなかったようだ。
Aとしては、気づかれていては困る話だったのだが。
とはいえ、知らなかったとは言え、
謝った方が良いのでは無いかとも考えていたのだが、知らない方が良いこともあるのでは無いか、
そんな葛藤もあった。
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作者名:white12 | 作成日時:2019年11月12日 20時