過ごした日々 ページ28
塔 「あ!A、いたいた!」
Aが、少し気恥ずかしそうな表情を浮かべながら寮の方へ戻ってくると、
塔子が駆け寄ってきた。
塔 「もう、どこ行って――」
そして、Aの少し後ろ、
いや、並ぶようにというべきか。
降谷が、似たような表情で歩いてくるのを目にし、口元を緩めた。
塔 「…写真、撮らない?」
『え?』
塔 「ほら。最後だから、ね?降谷くんも」
降谷にニヤッと笑った後、ちらり、と塔子が視線を向けた先には、
萩原や松田たちの姿があった。
そこには景光の姿も。
強引に誘ったということだろうか。
塔 「ほら。萩原くんたちも一緒に、ね?」
デジカメを片手にニヤリと笑う塔子に、
Aは少し恥ずかしそうに、でも、小さくうなずいた。
先ほどの降谷とのやりとりはもちろんだが、
やはり、今日は卒業なのだ。
明日からは、もう簡単に会えるわけじゃない。
塔 「じゃあ…ここ、かな?」
そして、塔子が足を止めたのは、食堂の前だった。
小さく手招きするようにして、
萩原たちを呼んでいる。
萩 「食堂かぁ。良いな。
確かに、一番思い出がある気がするよな?」
松 「…春宮がいきなり寝始めた衝撃的な場面もあったしな」
塔 「フフッ。それ、私も見たことある」
『ちょ、ちょっと疲れてただけよ…』
Aをいじるようにして、食堂の前に集まる面々。
そして、後ろを付いていくように、やや気まずそうな顔を浮かべていた降谷は、
同じく、口を開かずにいる景光にちらりと視線を送った。
降 「…ヒロ。あのな――」
景 「良かったな、ゼロ」
降 「…え」
景 「…な?」
仕方ねぇな、という顔で、小さく笑う景光に、
降谷は少し困った顔を浮かべた。
そうして、景光は静かにAに近づくと、
その頭にそっと手のひらを乗せた。
『…は?』
きょとんと怪訝な顔で見上げてくるAに、
ニヤリと笑い――
わしゃわしゃとその髪を撫でた。
『…ちょ、ちょっと…!』
景 「…良かったな?」
こそっと耳打ちをしてくる景光に、
ほんのり頬を赤くするA。
先ほど、同じようにして零された、降谷からの言葉を思い出したのか。
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white12(プロフ) - ra -ra さん» コメントありがとうございます。SNOW DROPは,拙いながらも私自身けっこうお気に入りでして,警察学校組好きが溢れた作品でした。お楽しみ頂けていたなら本当に嬉しく思います。 (2021年5月26日 21時) (レス) id: 654daa9564 (このIDを非表示/違反報告)
ra -ra - やばい。何度読んでも面白い! (2021年5月18日 16時) (レス) id: 4001d860f3 (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - 燎彩さん» とても嬉しいコメントありがとうございます!最高と言っていただけて本当に嬉しいです。長くはなりますが、続編 (II)も更新中ですので、もし宜しければお楽しみ頂けますと幸いです。 (2020年1月23日 13時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
燎彩(プロフ) - 完結お疲れ様でした!語彙力皆無なので一言だけ…最高です!! (2020年1月22日 11時) (レス) id: c873624ead (このIDを非表示/違反報告)
white12(プロフ) - さちさん» 本作をお読み頂きありがとうございました。面白かったと感じていただけてとても嬉しいです。もしよければ続編もお楽しみ頂ければ幸いです。 (2019年11月18日 23時) (レス) id: b6a71bc5a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:white12 | 作成日時:2019年9月1日 9時