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意識の奥の方に、微かに聞こえる話し声で
目を開けた律。
ごそっと体を動かすと、聴き慣れた爽やかな声が 頭上から振って来た。
「どこまで覚えてる?」
「―――……
「はは!注射から逃げる子供のようだね」
隣で声をあげて笑うラスに、視線を上げて睥睨を向けるも 反撃するだけの気力はなかった。
熱のピークは過ぎたようだが、まだ体の節々が痛くて頭が重い。唇が乾燥して、声を出すのも億劫だ。
ここはロフトにある律の布団の中で、
昨日は高熱を出して倒れた事を、薄っすらとだが覚えている。
外が薄っすらと明るい所を見れば、あのまま一晩眠っていたのだろう。
この状況では、仕事に行けそうもない。職場のスタッフや担当患者に迷惑をかける事は申し訳ないが、病欠の連絡をして、今日は体調を整え、明日の復帰を目指す他ないだろう。
そんな事をぼんやりと考えていると、
さっきまで声をあげて笑っていたラスクードが、昨夜の事を話してくれた。
救急要請を行おうとした風の腕を止め、「救急車は呼ぶな」と律が断固拒否した為、
風は仕方なく律の携帯電話からラスクードに連絡をとり、彼を呼び戻した。
38度を超える高熱が出ていた事から、対処療法として常備薬から解熱剤が与薬され、ラスクードの手を借りて二階の布団に引きずり上げられたようだ。
そう言えば、彼は昨日出かけていて 一晩帰らないと聞いていたのに……。
「悪い、ラス。迷惑をかけた」
「俺はいいよ。それよりも、連絡をくれた彼女に礼を言うべきだ」
「―――そう言えば、風ちゃんは……」
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