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「貰っていいの？」
小さく頷くものの、彼女はこちらを見ようとはしない。
要らぬことを口走りこれ以上機嫌を損ねてしまう前に、と、律は受け取ったチョコレートを一粒、口の中に入れた。
ミルクチョコレートとほのかに抹茶の優しい甘さが、口腔内に染み渡る。
「おいし」
律の声に、視線を逸らしていた風が顔を上げる。
「甘すぎた？」
「んや。疲れていたから、今はこの甘さが有難い」
「それは。普段だと、甘すぎるって事か」
「そう言う意味じゃないよ。有難う、生き返ったよ」
微笑む律を見て、強張っていた風の表情が、幾分か絆される。
そして、「大袈裟だ」と笑った。
彼女が律に、笑顔を向けるのは珍しい。
だが今それを指摘してしまうと、風はまた視線を逸らしてしまうだろう―――
だけど―――
流石にこれは、期待する。
「ラス、今日は帰って来ないんだっけ？寂しいから、風ちゃん夕飯一緒に食べてよ」
「いや。夕飯作ったらウチは帰―――」
ドサッ―――……
再び視線を逸らせた風の横で、何かが落ちる音がする。
慌てて視線を向けると、律がフロアに座り込んでいた。
「っ？！ 律先生、律さん!!
―――律ッッ!!」
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