* ページ8
「無理です。僕、子供嫌いなんで、小児科向いていません」
「へぇ。そうなの?」
昔、睦の実姉でもある柏木澪と交際していた時も彼女が似たような事を話していた事を、ふと脳裏に思い出す。
部屋の片づけが出来ないところや子供が嫌いなところ、
妙に冷めている所は、やはり姉弟似ていると感じていたが、
それを口に出せば睦から猛烈な反感を買う事は火を見るよりも明らかで。
七汐は、適当な相槌を打ちながら、静かに口腔内で珈琲を転がした。
“子供って、動物園から逃げてきた猿みたいで、どうにも好きになれないのよね。私、小児科は向いてないかも〜”
その時は、七汐も特別子供が好きな訳ではなかった上に
結婚や、自分が親になること等まだまだ先の事だと考えもしなかった為、
気にする事なく流していた。
あれから今日までの間に、子供が好きになるようなエピソードに遭遇したわけでもないと言うのに、今では子供も悪くないと考えてしまうのは
明らかに祥子の影響が大きいだろう。
彼女は子供を欲しており、その想いはINFINITY∞に来店される子供客への接客態度を見ても明らかだ。
年齢を気にしてか焦りも見受けられ、祥子との将来を真剣に考える七汐も、必然と“子供”を意識していたのかもしれない。
〜♪
突然、七汐のスマートフォンに着信が鳴る。
サイレントモードにするのを、忘れていたようだ。
ディスプレイに表示された
「どうかしました?」
今夜は友人と外食すると聞いていた。
だから睦からの誘いを受け、こうして勉強会(と言う名の座談会)を行っていたのだが
何かあったのだろうか。
『やあ、今晩は。君が“萩原君”かい?』
祥子の番号から聞こえる、聴き慣れない声に、七汐は一瞬にして表情を強張らせる。
隣から漂う緊張感に、
珈琲を飲んでいた睦もカップを戻して音を潜め、七汐のスマートフォンに耳を傾けた。
1人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ