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「萩原君、子供の扱い上手いよね！子供好きなの？」
「いえ、そんな事は……」
揚々と訊ねる小児科看護師から、七汐はふいっと視線を逸らせた。
どちらかと聴かれると、子供は苦手な部類だ。
煩いし、話が通じない
調子が良くて、面倒である―――だけど
抱きかかえた、小さな温もりが
七汐の腕に蘇る。
ころころと変わる表情と、キラキラと輝く好奇心に満ちた瞳。
先程の母子の姿を、
「いや―――……欲しい、です。子供」
ぼそり、呟く七汐に
一瞬目を丸くさせた小児科スタッフ達が、ニマニマと揶揄うような笑みを向ける。
「おっ！！萩原パパかぁ〜」
「いやぁ、萩原君ならいい父になれるとおもうよ！」
「茶化さないで下さい！」
注がれる好奇の眼を退け、七汐は足早にスタッフヤードに戻った。
話をしていた外来師長は、七汐が予防接種の介助を行っている間に別の呼び出しがかかった様で、
話の続きはまた後日との伝言を受け取ったのだ。
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・
「―――って、言ってましたよ。先輩方が」
舌が焼ける程の熱い珈琲を、ずずずと啜る音を響かせ
睦は抑揚のない冷めた口調で、淡々と昼間の様子を説明した。
聴けば。
午後からの定期予防接種に、睦も小児科に応援に来ていたらしい。
だが彼は、問診票の確認や
学童期の子供が暴れ出すと、女性スタッフや母親では制御できない。大柄の小児では、男性医師でも手に負えない事もある。
刺す瞬間に腕を動かしてしまえば、
「睦、
―――ってか、お前が診察介助に入ればよくね？
出された珈琲カップに手を伸ばす。
香ばしいナッツとビターチョコを思わせる香りが鼻腔を刺激し、疲れた頭を活性させる。
先日部屋を訪れた時は、ガラステーブルの周辺に腰を据える場所がない程テキストや楽譜が散乱していたと言うのに、
今日は必要なテキスト以外見当たらず、片付けられた部屋は閑散としていた。
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