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表情を強張らせる洋平の両手に、ずっしりと重みが伸し掛かる。同じく本業の有給休暇を取り、荷運びを手伝っていた睦が、無沙汰となった彼の両手に段ボール箱を置いたのだ。
「じゃぁ、僕もお願いします。河豚とか、鱧とか―――」
袋詰めされた小荷物を肩にかけた睦も、ただ飯に便乗しようと口元を意地悪くほころばせた。
「えー！桐島さんのお店でパーティするの？あたしも行く！！
姫ちゃんもこれを期に勉強しときなさい！！INFINITY∞の“次期シェフ”なんだからさ！」
同じく作業を手伝っていた明日香が、姫子を誘って小荷物を両手に洋平の横を抜けていく。
「はい、是非勉強させてください！」と慇懃に頭を下げる姫子もまた、明日香の後を追った。
追い抜き際にちらり振り返る姫子に、洋平も「浅葱も言うようになったじゃねぇか」と言葉を投げる。
確かに、以前の姫子なら遠慮が勝り、こんな冗談も返せなかっただろう。
そんな彼女の変化を感じ、桐島の表情は、どこか嬉しそうに見えた。
洋平の荷物が、一つ
また一つと、トラックの荷台に積み込まれていく。
荷台に荷物がこじんまりと納まった頃、
すっかり寂しくなった
ここから先 彼の新居には、トラックを運転する一矢と助手席に乗り込む家主の洋平、積み荷の担ぎ手として七汐と睦が車で向かう事となっている。
だから―――ここでお別れ。
三笠夫妻を始め、荷造りを手伝った姫子や明日香もまた玄関先に並んだ。
洋平は、ポケットから
「本当に、よかったのか？INFINITY∞のリーダーと
冗談めかしく笑う洋平に、姫子は静かに首を横に振る。
「いいんです。私は、
それに―――」
逡巡を巡らせるように少しの間を置いた後、姫子は決心したように口を開いた。
「４Cは、私が桐島さんに認めてもらえるINFINITY∞の“本物のシェフ”になれた時に転居します」
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